題名:なぜビーフン専門店が存在しないのか?
報告者:トンカツる
麺類はつるつると食べることができる。さらに、とてもおいしい麺は、それが浸るスープと相まって、至上の喜びを感じざるを得ない。これぞ、ザ・麺類の醍醐味でもある。その麺類の起源は、自然に生えている穀物を収穫し、茹でるなり蒸すなりし、それを餅状し、ペースト状にしたことが第一歩とされる1)。さらに、第二歩は、臼の利用と、粉食の始まりにあり、イラン系トルコ系の民族による中央アジアがその起源とされる1)。ちなみに、小麦の発祥地もこの地である。臼の中でも製粉技術の基となった回転臼(ロータリーカーン)の最古のものが、トルコ東部のチグリス,ユーフラテス川上流のウラルトウの遺跡から出土しており2), 3)、それが利用されていたという証は、まさに先に述べた麺の第二歩である粉食の利用が、そこで常用的に行われていた可能性を示唆している。
粉食の利用の始め頃は、粉物を成型する際に細長くなった、あるいは、切れはしなどの出来そこないが、麺として存在していたのかもしれない。それが麺としてあえて成型するようになり、やがて本格的な麺類へと発展したのであろう。
麺類に関して、真っ先に思い浮かぶのは、うどん、そば、ラーメン、パスタ(中でもスパゲティ)になろう。この中でも、うどん、ラーメン、パスタはいずれもが小麦から精製されており、小麦の文化の発祥と色濃く紐づいている。そばは、小麦と違い同じ穀物でもソバの実に由来するが、ソバは冷涼な気候、雨が少なかったり水利が悪かったりする乾燥した土地でも、容易に生育する利点があり、中国南部が発祥とされる4)。そのため、小麦の栽培では難しいとされる地域でも、ソバなら栽培できた可能性があり、それでそばが発展したのではないだろうか。一方、これらうどん、そば、ラーメン、パスタ以外でも麺類があり、それが表題のビーフンである。先の4つよりも有名な麺類でなく、かつ専門店もないことから(後日の調べでわずかに数件のビーフン専門店があることが発覚したが、それでも先の4つの麺類と比べても非常に少ない。ビーフン東、山水屋、健民ダイニングなどがそれに相当するのであろう)、食べたこともない人も多いと推測される。ビーフンの原料は米であり、中国南部の福建省周辺が発祥である5)。そのビーフンは、東アジアの華中以南で多く食され、それらの地域では小麦の生産量が少ないことから発展した経緯がある5)。うどん、そば、ラーメン、パスタに関しては、近年は専門店が多くなったものの、今後専門店として増える期待がかかる麺類の店と言えば、やはりビーフン専門店になるかもしれない。筆者の経験ではあるが、かつて台湾料理のお店で食べたビーフンのうまさは格別であった。その時、第5の麺として、そのうまさが広まるのもそう遠くはないと感じた記憶がある。ビーフンの画像を図に示す。乾燥した状態であるが、見た目から、うどん、そば、ラーメン、パスタとは違い、やや透き通っているのが特徴である。
図 ビーフン5)
1) http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1449762929 (閲覧2016.10.3)
2) http://bigai.world.coocan.jp/msand/powder/urartu.html (閲覧2016.10.3)
3) 三輪茂雄: 粉の文化史. 新潮社. 1987.
4) https://ja.wikipedia.org/wiki/ソバ (閲覧2016.10.3)
5) https://ja.wikipedia.org/wiki/ビーフン (閲覧2016.10.4)