.

題名:愛の頂きに辿りつけていない以上
報告者:ダレナン

 本報告書は、基本的にNo.1634の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

アサリ:「で、兄ちゃん。山行くのいつから?」

「今度の週末かな…」

アサリ:「週末、かなり天気悪くなるみたいだけど、また独りで登るの?」

「もちろん、ソロで」

アサリ:「ふーん」

サヨリ(カツオの母):「気をつけなきゃだめよ、カツオ。あっ、そうそう、ソウハチ伯父さんから、超特大ずわい蟹(図)をいただいたのよ。今晩、食べる?」

アサリ、コンブチャン:「食べる、食べる」

「でも、これ羽合沖じゃなくて、カナダ産じゃ…」

サヨリ:「カツオも細かいこと気にするのね…。いいじゃない、別に。三文ストーリーなんだし…」

図 超特大ずわい蟹1)

 そうして、その日の夜はずわい蟹鍋となった。やっぱり家族で鍋をつつくのは楽しい。
 ここのところコンブチャンも、随分と箸の使い方が上手になってきていたことに、ふと気づいた。しゃべるのも、箸の使い方も、コンブチャンは意外にもすぐに習得している。家の家事も、結構、母と連携して、うまく物事を運んでいるようだった。考えてみれば、日本の作法にも、すっかりと馴染んでいた。さらに、この前も、アサリとコンブチャンが街を歩いている時に、「仲のいい姉妹ですねー」と地元の老人にいわれるぐらいに、アサリとも馴染んでいた。その馴染み方に、コンブチャンは、いったいどこの国の人なんだろう、と、不思議に思えた。
 でも、未だにコンブチャンは、過去の記憶が思い出せない。もし、仮に、いずれ思い出したとすれば、イソベ家からいなくなるのだろうか。そうすると、母もアサリも相当に悲しむかもしれない。アサリがいうように、コンブチャンを嫁さんにすれば、それが解決できるのだろうか。いや、身元も分からない、もしかしてコンブチャンはすでに結婚しているかもしれない。
 そもそも、愛の頂きに辿りつけていない以上、僕は、琉花と晴美さんへの想いを忘れるべきではない(No.1634)。山が呼んでいる。今日もまた、愛という山が、僕を呼んでいるのだ。

サヨリ:「カツオ。最近、仕事はどうなの。ソウハチ伯父さんとうまくやってる?」

 そう、たらちねの母はいう。たらちね…?(*)

*たらちね: 「母」あるいは「親」にかかる枕詞2)。
1) https://store.shopping.yahoo.co.jp/morigen/a4baa4efa4.html (閲覧2020.2.19)
2) https://schoolsips.exblog.jp/4996411/ (閲覧2020.2.19)



…「ずわい蟹」の品への案内は、こちらになります。


地底たる謎の研究室のサイトでも、テキスト版をご確認いただけます。ここをクリックすると記事の題名でサイト内を容易に検索できます。