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題名:ヨウ素の要素
報告者:ナンカイン

 ヨウ素とは、フランスの化学者であるベルナール・クールトア氏によって海藻灰から発見された原子番号 53、原子量 126.9 の元素である1), 2)。小学生の過程において理科の時間などでジャガイモの切った表面にある液を垂らすと紫色になる実験の現象があったが、そのある液の正体とはヨウ素の溶液に他ならない。その反応は、正確にはジャガイモにあるデンプンとヨウ素との化学反応によることから、ヨウ素デンプン反応とも呼ばれる3)。そのヨウ素デンプン反応を分子レベルで説明すれば、螺旋状に巻いているデンプンの長い分子の中に、ヨウ素の分子がとりこまれた(包摂された)ことで紫色になる3), 4)。
 一方、ヨウ素は消毒薬としてもよく用いられる2)。そのため、第3類医薬品(第3類医薬品についてはNo.275も参照)の消毒液としてヨードチンキなるものがあるが別に珍奇ではなく、ヨウ素のアルコール溶液が、ヨードチンキとなる。今はあまり見なくなった光景ではあるが、かつて注射の前に消毒として脱脂綿に茶色の液体を湿らせ針を刺す部分によく塗付した。その経験をお持ちの方もあろうが、あの茶色の液体は、ポビドンヨード液やポビドンヨードエタノール液など、ヨウ素が元となる消毒液(ポビドンヨードはヨウ素とポリビニルピロリドンの錯化合物2))による。現在の注射では速効性と速乾性が求められるため、アルコール製剤のみを注射部位の消毒に用いるが多いものの、時には10%ポビドンヨード液などを用いることもある5)。
 そのヨウ素の要素として、ヨウ素(元素記号はIとなる)には24種類の同位体がある6)。同位体とは化学的性質は同じであるが、重さ(質量数)が異なる元素のことを指し、この24種類のヨウ素の同位体の中で放射線を出さないのは重さ127のヨウ素(127 I)だけとなる。核実験や原子炉事故時に検出される重さ131、132、133などのヨウ素(それぞれ131I、132I、133Iなど)6)は、あえて放射線ヨウ素と言われる。
ヨウ素の特徴には甲状腺に集積され易いことが挙げられる7)。そのため、核実験や原子炉事故時で放出されるこれら放射性ヨウ素は、体内に取り込まれると甲状腺に選択的に集積し、放射線の内部被ばくによる甲状腺がんなどを発生させる恐れがある7)。このようなことが予想される時は、安定ヨウ素剤(ヨウ化カリウム)が処方され、甲状腺を放射性でないヨウ素で身体を充たしておく方法が最も効果的とされる7)。それは、東日本大震災による福島第一原子力発電所事故の時だけでなく、チェルノブイリ原子力発電所事故後でもポーランドで安定ヨウ素剤が服用された実績があり、これは、安定ヨウ素剤の服用によって放射性ヨウ素の内部被ばくによる甲状腺がん発症の予防を目的としたものである7), 8)。ただし、放射線誘発甲状腺がんの発生リスクは40歳未満に限られ、40歳以上では放射線被ばくにより誘発される甲状腺発がんのリスクもなく、安定ヨウ素剤を服用する必要がない 8)。

1) https://ja.wikipedia.org/wiki/ベルナール・クールトア (閲覧2018.5.24)
2) https://ja.wikipedia.org/wiki/ヨウ素 (閲覧2018.5.24)
3) http://www2.tokai.or.jp/seed/seed/minna13.htm (閲覧2018.5.24)
4) http://www.jsac.or.jp/bunseki/pdf/bunseki2007/200705kougi.PDF (閲覧2018.5.24)
5) http://www.yoshida-pharm.com/2012/text03_01/ (閲覧2018.5.24)
6) http://www.ies.or.jp/publicity_j/mini_hyakka/63/mini63.html (閲覧2018.5.24)
7) http://www.doyaku.or.jp/guidance/data/H24-1.pdf (閲覧2018.5.24)
8) http://www.u-tokyo-rad.jp/data/ninpuyouso.pdf (閲覧2018.5.24)



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