題名:何かを創造するのは想像するだけでも大変である。
報告者:ナンカイン
表題の通りではあるが、「何かを創造するのは想像するだけでも大変である」ことは、大人になるとよく理解できる。特に、大人になると経験値や知識レベルはアップするも、その過去の経験や知識に縛られ、想像も既知の経験・知識が足かせとなり、結果として創造的思考が乏しくなりやすい。この状況を端的に示す結果が図になる。これは、ニューヨーク・アカデミー・オブ・サイエンスのフェローであるGeorge Land博士2)が、小児および成人の多様な思考能力レベルをテストするために行った調査結果で、問題を解決するための複数のアプローチを生み出す能力の測定から各カテゴリの「創造的な天才」を追跡したものとなる3)。ここで言う天才とは、特定の質問や問題に対して100の答えを出すことができた人としている3)。この図から、5歳:回答者の98%が創造的な天才である、10歳:回答者の30%が創造的な天才である、
図 年齢に伴う創造的思考スコア1)を一部改図
15歳:回答者の12%が創造的な天才である、大人:2%の回答者が創造的な天才である、ことがよく理解できる。天才に関しては報告書のNo.454でも示されたように、才能×努力の関係が推定され、さらにその才能に関しては知能と創造性に分けられ、知能は集束的思考能力、創造性は拡散的思考能力に分類される4)。集束的思考の典型は、通常の計算過程のように多様なプロセスがあっても正答が同じとなるものである。拡散的思考とは、例えば新聞紙の用途をできるだけたくさん考えよ、などが挙げられる4)。さらに一歩進むと、創造性は通常の創造性と並外れた創造性に分類できる5)。通常の創造性は、本をたくさん読んだり、新しい分野に触れたりすることによって訓練して伸ばすことができるものである5)。一方、頻繁に意識して考えていない時に、着想を得るタイプが並外れた創造性である5)。所謂天才と称される人物に備わっている創造性でもある。このように分類すると、一般的な人物であれば、大人になっても想像を絶やさずに創造を発揮するためには、拡散的思考能力を養いつつ、それによって通常の創造性を高めることになると言えよう。日本画家である千住博氏は創造的な能力について、創造的な能力とは観察力から生まれ、別の言い方をすると、発見する力であると述べている6)。この多くの観察力は、結局のところ拡散的な思考能力を養うことに他ならないかもしれない。
1) https://www.quora.com/Is-creativity-acquired-or-inherent (閲覧2017.4.13)
2) https://worldbusiness.org/fellows/george-land-ph-d/ (閲覧2017.4.13)
3) https://www.linkedin.com/pulse/back-future-reclaiming-our-ability-think-creatively-fi-haywood?trk=mp-reader-card(閲覧2017.4.13)
4) 藤永保: 才能とは何か –学力観の背景-. 日本教育大学院大学紀要 3: 1-16, 2010.
5) アンドリアセン, NC: 天才の脳科学 -創造性はいかに創られるか-. 青土社. 2007.
6) http://mind.c.u-tokyo.ac.jp/Sakai_Lab_files/Staff/KLS_PaperJ/KLS2014JNl.pdf (閲覧2017.4.13)