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題名:寝ている女性は何を夢見ているか?
報告者:アダム&ナッシュ

 夢に関しては報告書のNo.957を始めとして、当ショでも多くの議論が重ねられたところではあるが、その世界観を問うと、現実にはありえないはずの世界も垣間見られることもしばしばである。夢世界は脳のアバターであるとするフィンランドの心理学者、Antti Revonsuo博士による説もあるが(報告書のNo.960参照)、それ自体も完全に科学的に証明するのは、夢という存在の捉え難い領域の研究となる。実際に、精神分析の領域において、夢に象徴的な作用があるとするも、その作用が各派によって主張されるような意味が本当にあるのかどうかについては、未だ明らかではない1)。
 近年における夢と脳波との関連の研究を見ると、イギリスのスウォンジー大学の神経科学者であるJean-Baptiste Eichenlaub博士ら2)は、レム睡眠期間における前頭前野の活動と直近の目覚め後の経験との間には、正の相関があることを発見している。さらに、そのような相関関係は、古い記憶にも、徐波睡眠(*)における夢にも観察されず、夢に組み込まれた直近の目覚め体験の感情的強度は、組み込まれていない経験の感情的強度よりも高かったことを報告している。これらの結果から、夢はレム睡眠中に起こる感情的な記憶処理を反映しているという理論と一致した見解を得ている。一方で、感情的な記憶処理に夢が役立っているのであれば、夢がもたらす記憶の断片を材料にした物語は、感情的に記憶に与えたであろう自分自身の脳が紡ぐリアルな物語と言い換えることができるのかもしれない4)。しかしながら、その物語はランダム・チョイスであり、そのチョイスは、適当に結び合わせたつじつま合わせ5)、である。すなわち、本質的に夢はランダムな神経活動に他ならず1)、繰り返し見る悪夢でなければ4)、そのテキトーさを単純に楽しめばよいのかもしれない。
 そこで、図の女性は何を夢見ているのかについて考えを巡らせると、やや口角があがっていることから類推するに、悪夢ではなさそうである。そして、ふかふかとしたソファーや手触りのよさそうな生地を纏っていることから、さぞかし幸せな夢を見ているに違いない、と思える。そして、もう一度この写真をよく見てみる。すると、奇妙なことが判明する。
 そう、これは写真ではない。絵である。まさに、「えー」となって感情的強度を伴って目を見開くが、Hyperrealism(ハイパーリアリズム)に位置づけられ、ロシアの画家Serge Marshennikov

図 Serge Marshennikov氏による作例5)

氏による絵となる。まさに、夢見心地から目覚める勢いが、画力から感じられる。

*:振幅の大きな,ゆっくりとした(2~4 Hzの) 脳波の現れる睡眠のことで、脳の多くの部分は休止状態にある。レム睡眠に対して、ノンレム睡眠とも呼ばれる2)。
1) 岡田隆、廣中直行、宮森孝史: 生理心理学 第2版. サイエンス社. 2016.
2) Eichenlaub JB, et al.: Incorporation of recent waking-life experiences in dreams correlates with frontal theta activity in REM sleep. Soc Cogn Affect Neurosci 13: 637-647, 2018.
3) https://www.yodosha.co.jp/jikkenigaku/keyword/3459.html (閲覧2019.1.24)
4) https://style.nikkei.com/article/DGXMZO92326260R01C15A0000000 (閲覧2019.1.24)
5) https://www.kaifineart.com/sergemarshennikov (閲覧2019.1.24)



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