題名:Foveonセンサーによる画質の再考
報告者:ログ
本報告書は、基本的にNo.131の続きであることを、ここで前もってことわりたい。
Foveonセンサーの構造は全色情報をセンサー全ての面から3層のCMOSで捉えることになる。そのため、通常のベイヤー配列のCMOSのように色情報を補正するフィルターが原理的には必要とされない(No.131)。近年はベイヤー配列も画素数が大幅に増えたため、フィルターなしのデジタルカメラも存在するが、ベイヤー配列の構造に伴ういわゆる偽色の問題は、0にはならない。そこにFoveonセンサーの画質の優位性があろう。ただし、Foveonセンサーは良い点ばかりではない。色情報を層で取り込むため、各色の情報が分離しにくい、あるいは、深層には光が届きにくいという欠点もある。言い換えれば、3層の色分離の画像処理には高度なアルゴリズムを必要とし、光量の弱い環境下では奥の層が受光しにくいため、その環境下では色ムラを起こしやすいことが明白である。しかしながら、その欠点を知りながらもSIGMA社はこのセンサーに社運かけ、もともとは別会社であったFoveon社を傘下に収めた。そのため、現在のFoveon社はSIGMA社の100%の子会社である1)。
それでは、SIGMA社の社運をかけてまでもFoveon社を手に入れた、このFoveonセンサーの画質の良さはなんであろうか。図にSIGMA社のSD1 Merrillで撮影した夕景を示す。 SIGMA社はフィルター補正のない構造に基づく解像度を、Foveonセンサーの一番の売りとしている。しかしながら、筆者らとすれば、実は奥行きのある画質を得られるのが、このセンサーの最たる能力であるように感じている。図は縮小してあるために、それが少々それが分かりにくいが、実は眼で見た立体感と同じような印象が画像
図 Foveonセンサーによる夕景の写真
から得られやすい。これを言い換えると、ちまたで言うところの空気感となるのであろうか。立体の基となる陰影の濃淡は、このセンサー独特のものである。銀塩フィルムに近い雰囲気もあり、SIGMA社では色再現・階調・ダイナミックレンジの粘りについて、「フィルムライク」とも称している1)。ただし、筆者らとすれば、フィルムと言うよりもよりもむしろ「絵画ライク」である。「絵画ライク」であっても、そこには色を無理に濃くしたような画像処理のごまかしではなく、明らかに数値的には表しにくい不思議な立体感の結果として「絵画ライク」が得られる。それこそが、このセンサー独特の画質であり、その不思議な立体感は、3つのCMOSの層で色情報を取り込む構造こそが、その端緒になるかもしれない。
1) Voice. Foveon、そしてSIGMAの”Meme”: SEIN 7. 8-13. 2015.
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