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題名:ダイダイの花から精油されるNeroliの効能
報告者:エゲンスキー

 正月のしめ飾りにおいて、その中でも最も目立つ装飾にダイダイがある。その由来はダイダイの名に掛けて”代々”となり、そのことから代々家が途絶えることなく、栄えますように、との願いが込められている1)。しかしながら、ダイダイ、別名ビターオレンジは2)、普段はみかんなどの市販されている柑橘系と異なり、しめ飾りなどで利用されるも、そのまま食することがない。その理由は、酸味と苦味が柑橘系の中では強いためとされる2)。そのことから調理的な利用も限られ、マーマレード、および、調味料や漢方薬の材料としてのみ利用される2)。一方、調理ではその利用が限られるも、香りのよさから、香水の原料として非常に人気が高い3)。特に、その中に、ダイダイの花から水蒸気蒸留によって得られる精油にNeroli(ネロリ)がある。
 Neroliの語源は17世紀のイタリアにおけるブラッチャーノ公爵夫人にまで遡ることができる。ブラッチャーノ公爵夫人、マリー・アンヌ・ド・ラ・トレモイユは、夫のフラヴィオ・オルシーニとともにネーロラのオルシーニ城に住んでいたことからネーロラの公妃とも呼ばれていた。そのマリー・アンヌ・ド・ラ・トレモイユは、当時、臭いがきつかった革の手袋に、ダイダイの花の精油を愛用し、それ以後、ダイダイの花の精油をNeroliと呼ぶようになったとされる4)。マリー・アンヌ・ド・ラ・トレモイユの肖像を図に示す。マリー・アンヌ・ド・ラ・トレモイユは1642年に生まれ、1722年にローマで死去した6)。フランスの最も古い公爵夫人でもあり、15歳(1657年)にドゥ・チャレ王子と結婚するも、当時の戦火でスペインに避難し、そこに3年間滞在してからローマに向かったが、ドゥ・チャレ王子が旅の途中で死亡したため、イタリアの大軍であったブラッチャーノ公爵と再婚することとなった。これにより、彼女はブラッチャーノ公爵夫人、ネーロラの公妃へと至る6)。この人生からも分かるが、彼女はイタリアとフランスの両国の影響下にあり、その翻弄した人生の中で、イタリアでのNeroli(ダイダイの花)のよさも自然と見出していたのであろう。

図 マリー・アンヌ・ド・ラ・トレモイユ5)

 そのNeroliの効能であるが、不安、ストレスを改善させ、心と感情を落ち着かせ、自信を促進し、気分を高めることが知られている。特に神経系に関しては、特に含有量の高いリナロール(化学式 C10H18Oの物質で、多くの植物の精油中に含まれ、スズランのような芳香をもつ無色の液体8))に基づく7)。さらに、スキンケアとしては、油性の皮膚バランスを整え、成熟した肌に栄養を与え、傷や傷跡の出現を減らす7)。今では、アロマオイルの一つとしても、このNeroli(ネロリ)の人気は高い。

1) http://tierin.net/culture/4670/ (閲覧2017.11.26)
2) https://ja.wikipedia.org/wiki/ダイダイ (閲覧2017.11.26)
3) http://www.takakura.co.jp/enjoy/tree_natural/treetext/bitter-orange/ (閲覧2017.11.26)
4) https://ja.wikipedia.org/wiki/ネロリ (閲覧2017.11.26)
5) https://commons.wikimedia.org/wiki/File:AnneMariedeLaTremoille.jpg (閲覧2017.11.26)
6) http://www.cosmovisions.com/Ursins.htm (閲覧2017.11.26)
7) https://essentialthree.com/blog/?p=1649 (閲覧2017.11.26)
8) https://kotobank.jp/word/リナロール-149160 (閲覧2017.11.26)



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