題名:カメラの原型からアーチストカメラへの発展を俯瞰して
報告者:ナンカイン
カメラの原型はカメラ・オブスクラにあろう。カメラ・オブスクラの原理は、現代で端的に言えばピンホールカメラに相当する。ピンホールカメラは、小さな穴(あるいは穴にレンズを取り付けて)から、そこを通過した光が暗室内の平面(フィルム)に射影されて画像を得る。実はこの構造は現在のカメラとそれほど大きな違いはない。違いを論じるとすれば、射影画像を得る際に、フィルムを使うか、デジタル信号に置き換わるかだけである。装置としてのカメラ・オブスクラは、16世紀のナポリ生まれの科学者であったジャンバッティスタ・デッラ・ポルタによる「自然魔術」にその記述が詳しく載っている。しかしながら、当時は暗室に小さな箱を用いず、本当の部屋で行っていた。まさに暗室である。小さな箱にレンズを取り付けたより現代のカメラに近似した形状となるには、それから1世紀を経てからとなる1)。この箱型のカメラ・オブスクラを起源として、同時にカメラレンズの開発も進んできた。
一方、近年はあらゆるものがデジタル化し、少なくともコンピューター関連でアナログ的な要素はまったくなくなった。その余波は、カメラの業界も避けては通れなかった。現在の店頭で販売されている多くのカメラはデジタルカメラであり、かつてのアナログとしてのフィルムカメラはほとんど姿を見せなくなった。同じくして、フィルム製造の大手であったコダック社も経営破たんし、フジフィルム社のフィルム製造も大幅に縮小を余儀なくされた。デジタルカメラであっても、構造的には射影画像を得る際の受光する素材が、銀塩フィルムか、CCDまたはCMOSの違いがメインであったが、そこにはフィルム時代の終焉が映し出されていた。
それではフィルムがこの世から完全にいらなくなった、あるいは、全くなくなったと言えば、そうは言えない。細々ながらも銀塩フィルムを愛する人が残っており、その需要はフィルム全盛の時代に比べてごくわずかではあるが、ニッチな産業として存在はしている。また、デジタルカメラでの後処理などとは異なり、フィルムで受光したならではのフィルム独自の味も依然として感じられることがある。そのために、あえてフィルムで写真を撮る人も今でも少なくはない。ただし、以前の様な高画質をフィルムで求めることは少なくなり、高画質ならデジタルを使うが、あくまでもフィルムの味を楽しむためのフィルムカメラとなった。その中でも最もフィルムの味を出すカメラがトイカメラと言われるジャンルにある。そのトイカメラの代表として名高いのがロモグラフィー社のロモである。図にロモLC-Aを示す。面白い形状をしているが、もともとの原型は実は日本のカメラレンズ会社のコシナ社のCX-1、CX-2にある。この辺は、文献3)に詳しい。そのロモグラフィー社からフジフ
図 ロモLC-A2)
ィルム社のインスタントフィルムを利用したLOMO’INSTANT4)なるものも登場し、ニッチながらも写真家のためのアーチストカメラとして、感性を増す一品になりそうである。なんとレンズも交換できる。
1) ハモンド, ジョン: カメラ・オブスクラ年代記. 朝日新聞社. 2000.
2) https://ja.wikipedia.org/wiki/ロモグラフィー (閲覧2015.12.2)
3) ガンダーラ井上: ツァイス&フォクトレンダーの作り方. 玄光社. 2015.
4) http://microsites.lomography.com/lomo-instant-camera/jp/ (閲覧2015.12.2)