題名:「めくるめく愛の枷」の記述を巡って –小説家マルセーヌ・デ=ベランダ―ルへの回想-
報告者:ダレナン
生涯に渡って一小説家がどれくらいの量を執筆するのかは、その小説家の力量による。ただし、若くして非業の死を遂げた作家であれば、その量も少なくなるのはいなめない。マルセーヌ・デ=ベランダ―ルもその一人に入るであろう。
マルセーヌ・デ=ベランダ―ルは、1946年にフランスのアルザス地方のリクヴィルに生まれたとされている。しかしながら、私生児という生い立ちから、正式な戸籍がない。そのため、今もって出生から生い立ちに渡って不明な点も多い作家である。
そのデ=ベランダ―ルは、18歳の1964年にマルグリット・デュラスによる小説「ロル V. シュタインの歓喜」に感銘を受け、本格的に小説家を目指したとされる。ただし、16歳の時から小説を書き始め、18歳になるまでには一通りの短編小説も記述した形跡があることから、デュラス以外の影響もあるのであろう。しかしながら、デュラスと同じく、ヌーヴォー・ロマン系の作家を目指していたのは、「めくるめく愛の枷」からも推測できる。
1965年に発表された「めくるめく愛の枷」の冒頭は、
僕は幼少期から足に不自由があった。そのことが、僕の人生に生涯、暗い影を落としていた。ただ、たった一人の女性を除いて、僕は真実の愛を知ることになる。
彼女の名は、アルベンヌ・ジョセフィーヌ。そう、ジョセフィーヌ伯爵家の一人娘であったアルベンヌお嬢様のことである。今思えば、彼女からの与えられた愛は、枷だったのかもしれない。でも、僕にとっては真実の愛そのものとして今も燦然と輝く。
である。文体はヌーヴォー・ロマン系としてはまだまだたどたどしく、とてもマルグリット・デュラスに追いついているとはいえない。しかしながら、時には若さゆえの作品としての面白みもあることは事実である。デ=ベランダ―ルの持ち味は、そこに魅力があるといっても差し支えない。
すでに冒頭から、この小説のいくつかのキーとなる用語が記述されている。足、枷、そして、愛の3つである。しかしながら、残念なことに、マスセーヌ・デ=ベランダ―ルは「めくるめく愛の枷」を未完成のままに、発表した翌年の1966年に交通事故で命を落としている。享年20歳のことである。実に、早すぎる死である。
ということが、1966年のフランスにあったのかは、分からない。しかも、マルセーヌ・デ=ベランダ―ルという人物もいたことすらも、分からない。なぜなら、ここに記述したマルセーヌ・デ=ベランダ―ルに関する内容は、すべてが一応フィクションだからである。この先のデ=ベランダ―ルの回想は、図の雰囲気でもって読者のあなた自身のイメージに委ねたい。
図 古いフランス語の手紙1)
1) https://contemporaryfamilies.org/looking-love-internet-19th-century-personals-much-common-todays-high-tech-versions-interesting-differences/ (閲覧2018.6.3)
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