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題名:和菓子は、なぜ”かわいい”とイメージされるのか?
報告者:ナンカイン

 和菓子はかわいい。ユイミコ氏の本「かわいい和菓子」1)にもその表題にあるように、和菓子はかわいいというイメージが確かにある。例えば、この本の表紙にある”うさぎまんじゅう”には実に愛嬌が漂っている。このように、和菓子には洋菓子と明らかに異なるイメージがあり、それは味だけではなく、その形態にも大きな要素がある。
 形態で言えば、洋菓子は四角、あるいは、三角のイメージが強いであろう。そして、丸という印象があまりないに違いない。しかしながら、和菓子に関しては、丸の印象が非常に強い。それは和菓子の製作の段階でも明らかであり、和菓子の製作は手で丸める工程が多く、その素材となる練り切りやぎゅうひは、手のひらで丸めることがとても多い。そのため、和菓子は丸く、かつ、そのサイズは手のひらに収まるサイズが多い。しかしながら、洋菓子は手で丸めず、大きなサイズから切り分けることが多い。それゆえに、洋菓子は丸くなく、手のひらに収まるサイズも少ない。和菓子が”かわいい”とイメージされる根拠には、このように丸と手のひらに収まるサイズがあるのではないだろうか。これを証明するように、先の本で和菓子の形態を調べると、掲載されている和菓子は28あるが、そのうち外観から丸でない、あるいは、外観の一部に丸的な要素が使われていない和菓子は5つほどしかない。しかも、28のほとんどが手のひらサイズに収まる。
 デザイン的に言えば、丸にはベビーフェース効果とされる要素が強い。それは、赤ちゃんや子供がもつ無邪気や正直といった性格を併せ持つ効果である。これを図示すると、下図のようにまん中がベビーフェース効果

fig

図 輪郭で見たベビーフェース効果2)

を生じやすい。図の3つの中で、もっとも”かわいい”と思えるのは、やはりまん中の丸ではなかろうか。
 この丸と手のひらサイズの他に、和菓子が”かわいい”とイメージされる大きな要素がもう一つある。先の”うさぎまんじゅう”にも示されるが、うさぎといった動物やあとは梅の花などの自然界に存在する動植物をモチーフにして菓子化するのは、明らかに和菓子の特徴である。この自然界のものをモチーフにして菓子化するのは、洋菓子にはあまり見られない要素であり、その由来は、日本人の自然観にある。日本人はスズムシやコウロギなどの虫の声に虫の音を楽しむが、一般的に西洋人はこれをノイズとしてとらえていることが少なくない3)。さらに、今西錦司博士が先駆となる擬人化や個体識別なる個々の猿の研究は4)、今となっては世界スタンダードであるが、実は西洋ではこのような研究がそれまでなく、ここにも日本人の自然観がいかんなく発揮されている。そのため、和菓子の”かわいい”には、実は日本人らしさも丸め込まれていたことが分かる。

1) ユイミコ: 道具なしで始められる かわいい和菓子. 講談社. 2015.
2) ポーポー・ポロダクション: デザインを科学する. ソフトバンク クリエイティブ. 2009.
3) http://www.muji.net/lab/living/150909.html (閲覧2016.2.14)
4) 今西錦司: 人間以前の社会. 講談社. 1951.



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