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題名:チンパンジーは人間になりたい夢を見るか?
報告者:ナンカイン

 原題を見て、この原題がフィッリプ・K・ディックの「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」をもじったことが分かる人も多いであろう。その通りで、もじった。
 人は他の動物と異なる社会形態を有し、人間の諸業の良し悪しはさておき、その異なる社会形態の根底に何があったのかを知ることは、人類史上で最も知りたい知識の一つである。人間によく似た類人猿のチンパンジーとの間に社会形態の差を生んだ見解の一つに、想像する力がある。少なくとも、想像することは、人間の特徴の一つであり、想像することが人が他の動物と異なる社会形態をもたらしたとも言われている1)。そこで、問題となるのは、人間の想像の、さらに源である。その源は、はたして何に端を発しているのであろうか?
 チンパンジーが人間となった出来事に対して有名なのは、映画「猿の惑星」であろう。その原作はフランスの小説家であるピエール・ブールの「猿の惑星」である。1968年に著名な俳優の一人でもあるチャールトン・ヘストンを主役として映画化されたので、その内容を知っている人も多いであろう。その映画では、人間が動物であり、チンパンジーの他、ゴリラ、オラウータンが人間を支配している構図を描いている。しかしながら、実はこの1968年の映画化に関しては、原作に忠実ではない場面も多いことも指摘されている。特殊効果が優れていることや監督のフランクリン・J・シャフナーの手腕にもよるが、原作に忠実ではなくとも、映画自体は高く評価された。一方、このピエール・ブールの原作を再検討し、それを元にティム・バートンが2001年に「猿の惑星 PLANET OF THE APES」として再映画化した。しかしながら、1968年の映画のインパクトが大きかったためか、2001年版に関してはそれほど評価がよくない。原作を知る人にとっては、原作により忠実である2001年の「猿の惑星 PLANET OF THE APES」の方が好ましく思う人もあるであろう。最終的には単なる個人の好みの問題になるが、当方は、原作も知りつつ、両映画を観たことから判断すると、ティム・バートン版が好みである。しかしながら、映画自体は両映画とも面白いのは事実である。
 これらの映画を通して思うのは、現存のチンパンジーには、人間の能力がどれほどあるかということである。DNA上ではチンパンジーと人類とでは大きな違いはなく、1.2%の違いに留まる。それを図に示す。この図からDNA上ではチンパンジーと人間の間では大きな違いはないことが分かる。その事実から、進化上で何がチンパンジーと人間で違いがあったのかについて、論議することは人間の存在を知る上で重要となる。先の想像することについては、その違いの一つとして挙げられるが、想像の源には何があったのかは、追求したくとも十分に研究されていない。しかしながら、筆者はその源には、実は夢があったのかもしれないと考え

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図 人間と類人猿のDNA上の違い2)

ている。チンパンジーは人間になりたい夢を見なかったに違いない。

1) 松沢哲郎: 想像するちから-チンパンジーが教えてくれた人間の心-. 岩波書店. 2011.
2) ストリンガー, クリス. アンドリュース, ピーター: 人類進化大全. 悠書館, 2012.



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