題名:人工知能は不倫するのか?
報告者:ダレナン
本報告書は、基本的にNo.861の続きであることを、ここで前もってことわりたい。
人類の事始めは、”愛憎”のもつれから生じ、そこから人らしい歩みが始まる(報告書のNo.860も参照)。そのため、ヒトのもつ感情が、人の感性に至り、人として”愛憎”が備わって、人なりに完成するのは、人が恋に落ちることを約束された定めでもある(No.861も参照)。ゆえに、互い違いの”愛憎”のベクトルの方向性に関する記述が、いつの時代でも、人のもつ普遍的な物語として受け継がれる。不倫もその一つである。例え、その結末がいつも同じであっても、である(No.860)。
一方、報告書のNo.530でも示されたように、人工知能はあと数年でシンギュラリティ(技術的特異点)を迎えるとされる。そのシンギュラリティは、人の知性は超えないにしても、”ある側面において”人工知能は人よりも優れた能力を持つ、ことは間違いないであろう。ただし、である。”ある側面において”、である。そもそも人工知能にはメスとオスの区別もない。生物学的には、オスの生殖器官とメスの生殖器官を一個体に持っているものを、雌雄同体といい、ヒトはオスとメスの間に外面的には生殖器官を中心として、明確な違いがあるために、雌雄異体となる1)。しかしながら、人工知能は雌雄同体でもなく、オスとメスに関わるもつれは、「この人工知能はオスです。この人工知能はメスです。」というプログラミングがなされようとも、それはプログラム上の定義に過ぎず、その人工知能自身がオスとメスの自覚を持つのかについては、甚だ疑問でもある。さらに、その自覚のないオスとメスの間に、”愛憎”がもつれるのかは、疑問以上の愚問でもあろう。人が人工知能に恋する物語は、映画「her/世界でひとつの彼女」でも描かれたが、オスの人工知能と、メスの人工知能が不倫に至る物語は、誰も創造しえない。
人の不倫劇を描いた映画「昼顔」(予告編: 図)では、女優の上戸彩さんと男優の斎藤工氏による、テレビドラマ「昼顔 ~平日午後3時の恋人たち~」の続編として、ドラマと同じくして監督は西谷弘氏、脚本は井上由美子さんによって担当された2)。その映画のあらすじや結末については、ここではあえて述べないものの、映画を盛り上げる助演男優の平山浩行氏曰く、「男(オス)はいくつになっても人のものがほしい。女(メス)はうばわれると愛されていると勘違いする。だから、結婚(オス
図 映画「昼顔」の一場面3)
とメスの一夫一妻性)しても不倫(一夫一妻性のもつれ)がやめられない。」(()内の記述は筆者による)とし、不倫に至る経緯を巧妙に述べている。しかしながら、人工知能は”ほしい”、”うばわれる”、”愛される”、”結婚”の人特有の文化的な背景、すなわち、人類の事始めが、この先も、シンギュラリティの先も、理解(感性的な知覚レベルとして)できるのであろうか。
きっとできない。よって、人工知能は不倫しない、とここで、明言したい。
1) https://ja.wikipedia.org/wiki/雌雄同体 (閲覧2018.7.14)
2) https://ciatr.jp/topics/226673 (閲覧2018.7.14)
3) https://www.youtube.com/watch?v=l4UGfBGzMkw (閲覧2018.7.14)