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題名:子育てにおけるアメとムチの配分
報告者:ナンカイン

 子育てはとても大変である。自らのDNAを引き継ぎつつ、それがプラスとなって子に表れていればよいが、自らの悪い面が如実に子に表れていると、遺伝の耐えがたい存在を確証せずにはいられない。そのため、子を持つ親として、我が子は、時には天使に見えるが、時には悪魔に見えることもあろう。人の子はネオテニー(幼形成熟)1)として生まれるために、親の手がどうしてもかかる。ゆえに、子を育てる難しさも生まれる。
 親にとって自らの子がどのような子に育ってほしいのかが、やはり子育てのキーポイントとなる。遺伝的に代えられない面はあるものの、最大限の子の能力を引き出せることが、子を持つ親の責務であると通常の親であれば誰もが思う筈である。その子育てにおいてよく使われる物品の例えとして、アメとムチがある。アメはその通りで「飴」であるが、甘いお菓子であることから、「おー、よしよし」がアメの考えに相当するであろう。一方、ムチは、革や細棒などしなりをもつ道具で、馬の尻などを打つあの「鞭」であるために、痛い。すなわち、「こら、やめなさい」がムチの考えに相当するであろう。
 近年は、子育てにおいてほめることで自尊心を持たせることができる、などの意見もあり2)、なんでもにアメが重要視されていることが多い。方やムチは、体罰などの処遇を連想させることから怪訝されていることも少なくない。しかしながら、アメだけで育つと、ほめられるのが当たり前となり、将来のしょっぱさへの耐性が少なくなりかねず、ムチだけで育つと、心が萎縮し、悲観的な観念にとらわれやすい子となることも予想されやすい。そこで、子育てにおいて大事なのは、日頃からのアメとムチの配分であろうことは容易に推測される。
 筆者は、報告書のNo.162において、子供の「脳力」を鍛える方法を検討した。その中でも、先のNo.364でも示されていたグリット(やり抜く力)は、子供の「脳力」を鍛える上でとても重要なファクターとなる。さらに、グリットを提言したダックワーク博士3)は、図1のように子育てに

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図1 子育ての4つのパターン3)

ついても4つのパターンを提示している。これについては具体的な各象限の事例はないが、少なくとも図1の第1象限に当てはまった子育ては、グリットも育ちやすいことを示唆している。さらに、この図1の軸を図2のようにアメとムチの量に置き換えると、実はアメとムチの配分が非常に理解しやすい。この図2から、アメだけに偏っても、ムチだけに偏っても、第1象限には至らないことが明らかである。すなわち、アメも、ムチも、適量な配分で与えることが、子育てにとっては重要であることが理解できる。

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図2 図1の軸をアメとムチに変更

1) Montagu, A: Growing Young. Praeger, 1988.
2) 出典不明
3) ダックワース, A.: やり抜く力. ダイヤモンド社. 2016. P3463.



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