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題名:シダ植物の形状の特徴を数学的に再現する
報告者:エゲンスキー

 シダ植物はその端正な形状と手入れが少なくとも美しくみえることから寺院にも多く植えられ、また、観葉植物としても栽培されることが多い1)。例えば、京都の右京区北嵯峨にある浄土宗の寺院である直指庵2)の景観を見ると、図1のようにシダ植物はコケ植物と並んで寺院における和のテイストを如実に感じさせる、緑色の観葉アクセントとして非常に映える。
 シダ植物とコケ植物はどちらも植物としての起源は非常に古く、シダ植物を分類した5綱、古生マツバラン綱、ヒカゲノカズラ綱、トクサ綱、シダ綱、前裸子綱のうち、特に古生マツバラン網の起源は、後期シルル紀から前期デボン紀(約4億2000万年前)にかける最古の維管束植物であり、シダ植物の原型とされる5)。シダ植物とコケ植物の違いについては文献4), 5)

図1 直指庵におけるシダ植物3)

を参照されたいが、系統学的には、シダ植物はコケ植物と種子植物との中間に位置する植物群である5)。その理由としては、水分や養分を通す維管束系をもつ点で種子植物と共通した性質をもつものの、胞子で繁殖する点でコケ植物と共通するためである5)。
 このようにシダ植物はその存在も、かつ、その形状も特徴的であり、形状は美しいだけではなく、数学的にも興味深い。シダ植物をよく観察すると、そこに規則性があることが見てとれる。葉の一つ一つが集まって、それが全体を成しているのである。このように、形の適宜な一部を取っても、それが全体と似ている成り立ちをしていることを自己相似的といい、数学的にはフラクタル幾何学として発展を遂げた。フラクタル幾何学は、フランスの数学者であるブノワ・マンデルブロ博士が導入した幾何学の概念であるが6)、近年のコンピュータの発展のおかげもあって、フリーのソフトウェアでも十分にそれを体験することができる。ここでは、グラフの作成ツールの一つであるgnuplotを使用して、シダ植物の形状の特徴をフラクタル幾何学に基づいて再現したい。なお、

図2 フラクタルによるシダ植物

再現のためのコードは文献7)を参照されたい。その結果が図2となるが、自然のシダ植物を人工の数学・コンピュータによって再現できるとは、これまた興味深い事実である。

1) https://horti.jp/8295 (閲覧2017.6.5)
2) http://www5e.biglobe.ne.jp/~jikisian/ (閲覧2017.6.5)
3) http://kyotomoyou.jp/jikisian-20150924 (閲覧2017.6.5)
4) http://manabu-biology.com/archives/コケ植物とシダ植物の違い.html (閲覧2017.6.5)
5) https://kotobank.jp/word/シダ植物-73743 (閲覧2017.6.5)
6) https://ja.wikipedia.org/wiki/フラクタル (閲覧2017.6.5)
7) 山本昌志: gnuplotの精義. カットシステム. 2009.



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