題名:フォアグラの知識を食べる
報告者:トンカツる
フォアグラと言えば高級食材の一つであり、その歴史はエジプトの第五王朝(紀元前2498年~紀元前2345年)まで遡ることができる1)。その当時のフォアグラは、現在のフォアグラと同じものを生産していたかは定かではないが、ガチョウ自体はエジプトの君主制で大切な料理とされ、紀元前400年頃に古代ギリシアのエウリュポン朝のスパルタ王であったアゲシラオス2世への贈り物として肥育したガチョウを紹介していたことが分かっている1), 2)。そして、紀元前2世紀頃になると、書物の中において強制給餌によるガチョウの技術についても書かれていることから1)、その当時から、今のようなフォアグラらしい状態でもって、すでに高級食材としての地位を獲得していなのかもしれない。ただし、強制給餌とあるように、飼料を胃に直接に流し込むことが必須となる。そのことから、フォアグラの生産は、いろいろと問題視されている。
その問題の一つに、動物愛護や動物福祉の観点がある。強制給餌によりガチョウやアヒルが肥満となり、動く能力を低下させ、結果として顔、目、鼻孔、首に怪我や痛みを引き起こす可能性があったり、脂肪症(脂肪性肝臓)によってガチョウやアヒルの早死のリスクが高まることが指摘されている3)。そのため、1974年のノルウェーでの動物福祉法に関する条例から、すべての動物の強制給餌を禁止することが始まったのをきっかけに、デンマーク、ドイツ、チェコ共和国、フィンランド、ポーランド、イギリス、イタリア、イスラエル、アメリカのカリフォルニアやシカゴにおいて、強制給餌の禁止やフォアグラの生産が中止され1)、現在では食材としてのフォアグラの地位も危うくなっている。しかしながら、古くからフランス料理の食材の一つで宮廷料理としてその地位を得て、美食家、富裕層に愛され続け、フォアグラの味が極められたフランスとしては、食文化の観点からもフォアグラをそう簡単に食材としてやめる訳にもいかない。それを回避すべく、フランス国立農学研究所(INRA)の研究者であるGerald Guy氏らを筆頭に、強制給餌を必要とせずに、ガチョウやアヒルに自発的な過剰摂取の刺激を与えることも研究されている4)。
そのフォアグラの味に関してであるが、「一口食べると非常に濃厚。「しょうゆを付けるとおいしい」ということで、しょうゆもかけてみたのですが、これがまた別格のうまさ。肉の脂のおいしさだけを凝縮したような味になっており、これだけバクバクと食べると「これは確かに世界3大珍味と言われるわけだ……」」とされる6)。そのため、やはり図のようなフォアグラの料理に舌包みしてしまうのは、グルメな人類のサガであろうか。
図 フォアグラの料理7)
1) https://www.wsj.com/articles/SB121207726422829649 (閲覧2018.10.18)
2) https://ja.wikipedia.org/wiki/スパルタ王 (閲覧2018.10.18)
3) Rochlitz, I., Broom, DM.: The welfare of ducks during foie gras production. Animal Welfare 26: 135-149, 2017.
4) Guy, G., Guemene, D., Serviere, J.: Le canard autogavant et/ou le foie gras sans gavage : mythe ou réalité réflexions sur les perspectives de recherches et d’applications. In: Réunion du Groupe Palmipèdes INRA, pp13-14. 2007.
5) https://ja.wikipedia.org/wiki/フォアグラ (閲覧2018.10.18)
6) https://gigazine.net/news/20100620_foie_gras/ (閲覧2018.10.18)
7) https://leitesculinaria.com/62442/recipes-pan-seared-foie-gras.html (閲覧2018.10.18)