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題名:球形物体の強度
報告者:ログ

 本報告書は、基本的にNo.441の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 先の報告書にて、水滴が球形となる理由を、表面の張力が最小となることによって回答した。さらに、球形には中心からの方向によって差別のない形状であることも示せた。そのため、球形はいわゆる全方向からの力に対しても高い強度を有する形状であることが推定される。そこで、本報告書では、具体的な球形物体の強度について調査したい。
 球形物体の強度の推定に関しては、圧力容器や内圧容器の分野で使用されるが、人間が乗り込む機器としてこの球形物体が用いられることが多いのは、深海潜水艦となる。深海などの外圧を受ける環境下での人間の安全性を確保するために、この球形物体が利用され、球と殻の形状から、球殻と呼ばれている1)。その球殻の様子は映画「タイタニック」や「アバター」でお馴染のジェームス・キャメロン監督の主演によるドキュメンタリー映画「深海への挑戦」でも見ることができる。このドキュメンタリー映画では、その球殻を作成している場面なども撮影され、「潜水艦はこんな風に作られているのかぁ」と感心できる。その構造は、初期の潜水艦の歴史と照らし合わせても面白いかもしれない(報告書のNo.147参照)。
 球殻の耐圧に関して古典的理論では以下の式で表される1)。

P_c=2E/√(3(1-μ^2 ) ) (h/R)^2

ここで、E:弾性係数、μ:ポアソン比、h:板厚、R:半径を示す。ただし、模型実験によって実際に得られる耐圧はこれよりも低いとされている1)。そのため、日本の潜水調査船である「しんかい6500」の球殻は、先の右式の2の値を1.4で計算している2)。「しんかい6500」の球殻の構造を図に示す。「しんかい6500」では球殻の材料としてチタン合金が用いられ、板厚は73.5 mmで、重量は4.39 tである2)。製造は、上半球と下半球を作り、それを貼り合わせることで球殻としている2)。ちなみに、この「しんかい6500」の球殻での強度を示すと、6500 mの深度に相当する圧である、680 kg/cm2以上で、1058 kg/cm2まで耐えうる設計としている。内径は約2 mほどであることから、深海調査を行う操縦士はかなり狭い丸い部屋にいることになるが、

図 「しんかい6500」の耐圧殻概略形状2)

この球殻のおかげで、人体の安全が確保されている。

1) 金井一彦, 他: 球殻の耐圧強度に関する実験研究. 日本造船学会論文集 132: 269-279, 1972.
2) 高川真一, 他: 「しんかい6500」耐圧殻の設計・製作. 海洋科学技術センター試験研究報告. R23, 1990.



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