題名:レオナルド・ダ・ヴィンチのモナ・リザに見る平均美顔
報告者:アダム&ナッシュ
本報告書は、基本的にNo.595の続きであることを、ここで前もってことわりたい。
レオナルド・ダ・ヴィンチについては、ここで言うまでもないが、イタリアのルネサンス期を代表する天才である。それは、絵画といった芸術だけではない。音楽、建築、数学、幾何学、解剖学、生理学、動植物学、天文学、地質学、物理学、光学、力学など様々な分野において偉業を成し遂げ、これを越えられる人はこの先もいないであろう1)。そのダ・ヴィンチが絵画で残した最も有名な作品にモナ・リザがある。モナ・リザを図に示す。イタリア語ではLa Giocondaと言われる作品であるが、この本物の画はいざ知れず、この画像を見たことがない人はほとんどいないであろう。モデルは、フィレンツェの富裕な商人で、行政官も務めたフランチェスコ・デル・ジョコンドの妻リザ・デル・ジョコンドであると言われているが3)、ダ・ヴィンチは生涯に渡ってこの絵に手を加えたことから、もはやモデルの原形を留めていたのかは定かではない。
このモナ・リザの作成の技法としてスフマートなるものが取り入れられている。スフマートは、深み、ボリュームや形状の認識を造り出すため、色彩の透明な層を上塗りする絵画の技法であるが4)、方や、鋭いエッジをあいまいにし、絵画のライトとシャドーの間に相乗効果を生み出すため、微妙な色合いの濃淡を示すことができる5)。そのため、絵全体になめらかな様相を得ることができる。
図 モナ・リザ2)
一方、1870年代後半にイギリスの科学者であるフランシス・ガルトン卿は、犯罪者の顔のイメージを創り上げるために、深刻な犯罪、かつ、有罪判決を受けた男性の複合写真を作成した6)。これによって、ガルトン卿は、複合された犯罪者の顔の異常性の発見を試みた。しかしながら、発見できなかった代わりに、結果で得られた顔が驚くほどハンサムであった6)。近年ではデジタル画像の利便性も手伝い、多くの顔の合成写真を得ることができるようになり、文献7)において、アメリカの男性俳優を中心とした顔写真の合成を見ることができる。その平均的な顔は、非常に魅力的な顔となる。このことから類推すると、ダ・ヴィンチがスフマートという技法を使い、生涯においてこのモナ・リザに手を加えたのは、先の顔写真の合成効果と同じくして、当時で最も美顔となる平均的な女性の顔を創りだそうと試みていた可能性もあるのではないだろうか。その真相は明らかではないが、多くのデッサン8)を残しているダ・ヴィンチにとって、女性の美顔となる平均的な合成顔が、彼の脳内では再現できていたのかもしれない。モナ・リザの微笑は、平均美顔の一つの回答としたい。
1) https://ja.wikipedia.org/wiki/レオナルド・ダ・ヴィンチ (閲覧2017.9.6)
2) https://michaelfield.dickinson.edu/book/la-gioconda (閲覧2017.9.6)
3) https://ja.wikipedia.org/wiki/モナ・リザ (閲覧2017.9.6)
4) https://ja.wikipedia.org/wiki/スフマート (閲覧2017.9.6)
5) https://www.thoughtco.com/old-masters-style-sfumato-and-chiaroscuro-2578618 (閲覧2017.9.6)
6) http://seedmagazine.com/content/article/beauty_is_in_the_processing-time_of_the_beholder/ (閲覧2017.9.6)
7) http://www.faceresearch.org/demos/famous (閲覧2017.9.6)
8) Zoellner, F., Nathan, J.: Leonardo Da Vinci: The Complete Paintings and Drawings. Taschen America Llc. 2015.