題名:地層から思想する
報告者:トシ
ふと足元を見ると、そこに地面がある。当たり前のことではあるが、仮に今いる所がビルの5階だとすると、5階のフロアのその下には4階があり、そのさらに下には、3階…がある。そして、階を思想的に下りると、ビルの土台にやがて突き当たる。今度は、同じことを歩道で考えてみる。すると、靴の下にはアスファルトがあり、その下には土があり、その土も年月を経て何層にも重なっているはずである。地層とは、まさに年月の年輪でもあろうか。すると、どうであろうか。かつての地球よりも今の地球は、層が重なったことによって、直径が幾分大きくなった?とも思想できる。それは、本当なのであろうか?
1669年に、デンマークの科学者ニコラス・ステノが、著書「固体の中に自然に含まれている固体についての論文」の序文において地層に関する法則を提唱した1)。それは次の3つからなる。
第1法則:地層は水平に堆積する (地層水平堆積の法則、Law of original horizontality)
第2法則:その堆積は側方に連続する (地層の側方連続の法則、Law of lateral continuity)
第3法則:古い地層の上に新しい地層が累重する (地層累重の法則、Law of Superposition)
である。このうちの第3法則が、地層累重の法則として地質学の基本原理となる2)。この3つの原理は、大部分の地層の基本的性質を表現している2)。
このような地層であるが、地層そのものは、礫、砂、粘土などの砕屑物(さいせいぶつ:岩石や鉱物が砕けてできた粒子)、火山の噴火で放出されて地表に溜まった火山灰、火山礫などの火山性砕屑物、そして、生物の遺骸が流動する水や空気によって運ばれ集積することによって層状となった単位のことであり2)、その重なり方から、その場所に過去に何が起こっていたのかを読み取ることができる3)。しかしながら、地球の衛星でもある月に目を転じてみると、空気や水のない月では、地表の上での物質の移動が起こらず、地形の変化が生まれない。そのために、1960年代後半から70年代初めにかけて行われたアポロ12号、14号、17号の月探査ミッションの痕跡が、2011年現在でもくっきりと残されている4)。一方で、空気や水のある地球の表面では絶えず物質の移動があり、地表の表面が変化するとともに、内部が熱い地球では、地面が水平移動するために、古い地層は削られつつ、新しい地層が作られることによって、地形が成り立つ。このことから、地球の表面が大
図 地層の積み重なり方3)
きくなるというよりも、たまり、削られ、たまりという繰り返しによって(図)、堆積した個所では地層として残り、そうでない個所では地層は残っていないことが判明した3)。
1) https://ja.wikipedia.org/wiki/地層累重の法則 (閲覧2018.8.28)
2) 青木正博, 目代邦康: 増補改訂版 地層の見方がわかるフィールド図鑑. 誠文堂新光社. 2017.
3) 目代邦康, 笹岡美穂: 地層のきほん. 誠文堂新光社. 2018.
4) http://www.afpbb.com/articles/-/2824898?pid=7725253 (閲覧2018.8.28)