題名:ブラックとホワイトの存在性
報告者:エゲンスキー
人の性格には様々な面があるが、表向きと裏向きの違いは陰陽として誰でもが秘めている性格面でもある。これを、生活面から見ると、日常と非日常とに区分できようが、それに伴う考察は、筆者による報告書のNo.548でも示した。一方、人に与える要素として、性格もあるが、話したこともない人物に対して、その性格的背景を探るのは、間違いなく外面からになる。例えば、普段から明るいと言われるような色、あるいは、派手な衣装を身にまとっている人に、陰気と思われることは少なく、逆の場合の色・衣装で、陽気と思われることも少ない。それが実際の性格を反映しているかは別として、表情だけでなく、衣装やアクセサリなどの外面から、相手への印象を操作できるのも、衣服・衣装を身にまとうヒトならではの特徴でもある。
服装とそれから得られる影響に関して、文献1)によると、人は着用している服装によって限定的ではあるが、他人に異なった印象を与え、少なくとも服装によって他人の性格を「勝手に」類推して先入観を持つという人の特性があることが指摘されている。さらに、人は服装のイメージとそれを着ている人のイメージをそれぞれ独立して推定するのではなく、合わせて推定していることも示唆している。このことから、「見た目」による第一印象(先入観)の形成において、その先入観がその後のコミュニケーションに少なからず影響を与える判断材料にもなろう。それは、服装でもあり、色でもありうる。概して言えば、黒いワンピースは、より大人っぽく、価値判断能力が高く、厳しい倫理観を持って、客観的に判断するような性格イメージを与えやすく、白色のワンピースは、他人を思いやる優しさや従順なイメージを与えることも示唆されている1)。
ファッション界においても、衣服だけでなく身にまとうもの、例えば、腕時計などでも、その効果を検討している。ココ・シャネルが興したファッションブランド、および、同ブランドを展開するフランスの企業のシャネルもその二項対立する色の組み合わせ、黒と白を基調に、2000年に腕時計のエレガンスなシグネチャーモデル(冠した製品)として、J12を生み出した2)。素材にもセラミックを採用し2)、そのこだわりぶりが伺える。御社のHPによると、「光と影があるように、ブラックとホワイトの存在があります。1つの同じビジョンが映し出す、2つの側面。2つの選択肢は、互いを打ち消すのではなく、補い高め合うためのもの。それは、ひとつの確信の表と裏。ブラックかホワイト、どちらでも良いということはありません。ブラックとホワイト、そのどちらも不可欠なのです。」2) と明記され、グレーではない、ブラックとホワイトの存在性を際立たせている。
図 シャネルのJ122)
1) 坂井信之: 人は他人を服装によって判断しているか? –TEG-Ⅱを用いて先入観の形成を測定する-.生活科学論叢 40: 1-13, 2009.
2) https://www.chanel.com/ja_JP/watches-jewelry/watches/the-essential-watch-j12 (閲覧2018.12.10)