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題名:広告における欲求の探求
報告者:ナンカイン

 本報告書は、基本的にNo.866の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 報告書のNo.865において、広告記憶に残る広告の作り方について検討するとともに、報告書のNo.866において、その検討をさらに進めて、実験的に広告の印象を探った。ここでは、広告が持つ欲求の側面から広告の印象をより探りたい。
 広告による心理的な技術として、アメリカのダイレクトレスポンス広告界の第一人者でもあるドルー・エリック・ホイットマン氏曰く、彼の著書1)の中で「生命の8つの躍動(LF8)」が人間の欲求を満たし、それが人の求めているものだと述べている。その8つとは、①生き残り、人生を楽しみ、長生きしたい、②食べ物、飲み物を味わいたい、③恐怖、痛み、危険を逃れたい、④性的に交わりたい、⑤快適に暮らしたい、⑥他人に勝り、世の中の後れを取りたくない、⑦愛する人を気遣い、守りたい、⑧社会的に認められたい、である。この8つが人間の生物としての欲求に組み込まれている(プログラムされている)ことを知ったうえで、これを広告にアピールすることで、人間心理に働きかけることができるとした。このLF8以外にも二次的に9つの欲求も存在するが、LF8の影響力は絶大であり、まずこれを踏まえて効果的な方法を考えることを提言している。さらに、氏曰く、欲求とは、必要が満たされない時に感じる一種の緊張感であり、緊張から欲求を満たそうとする行動が生じるという。
 欲求は、脳の機能面で捉えると、報酬系をなし、人間のA10神経の作用でもある(報告書のNo.619も参照)。そして、そこには、快・不快が生じやすい。すなわち、理性ではなく、感情、あるいは、その感情と直接に繋がれる行動の表出である情動にも容易に結び付く(報告書のNo.638も参照)。
 例えば、不快と言われている広告として図の左のようなものがある2)。サントリーのウェルネス広告であるが、これを画像と文字に分解すると、図の右のようになる。分解すればそこに関連性はないが、これらが組み合わさることで、快・不快の感情が生まれやすいのも事実である。その解釈は文献2)にあるも、広告の制作者側の明確な

図 サントリーウェルネス広告の一例2)を部分的に改図

意図は不明であっても、この広告も先のLF8をうまく利用していることが明らかであり、人への心理操作を応用している。ゆえに、そこには、人間の欲求に基づく何らかの反応が生じやすいのも事実である。

1) ホイットマン, DE: 現代広告の心理技術101. ダイレクト出版. 2011.
2) http://yunishio.blogspot.com/2013/03/blog-post_19.html (閲覧2018.7.20)



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