題名:手のひらの映画監督と映画館
報告者:ログ
近年の映像技術には目を見張るものがある。高価だった映像機器も今や個人のポケットマネーでも買えるようになり、映像の内容に関するクオリティは別に、誰でもが一介の映画監督として映像表現できる時代となった。デジタルシネマカメラの先駆的企業であるBlackmagic Design社の製品を見ると、同社のPocket Cinema Cameraは、128 mm×66 mm×38 mmの小型ボディにも関わらず、レンズ交換が可能で、16サイズセンサー、13ストップのダイナミックレンジなどの機能を搭載し、高品質HQファイルフォーマットにも対応している。図にBlackmagic Pocket Cinema Cameraを示す。このように見た目はコンデジと同じである。ただし、このような小型システムでも、通常の大画面の映画館で上映できるような1080HD解像度のProRes 422の映像を撮ることが可能である。この映像技術の進歩は、裏を返せば、優れたアイデアや脚本、撮影に対する技術さえ最低限ある人ならば、場合によっては一流の映画監督なみに映像表現ができることを意味している。現在の一流と言われる映画監督の多くは、全てが最初から一流ではなく古くは8 mmのフィルムビデオ等で収めた映像にアイデアやよい脚本、撮影の技術に萌芽があり、それを追求した結果がお金(興行収入)を得て、さらに映像機器も次第に一流となったに違いない。しかしながら、今や、その段階を経なくても、ハードウェアたる機器を扱うソフトウェア(映画監督的な撮影者)さえ優れていれば、すぐにでも一流になれる可能性を示唆している。また、Youtubeなどの映像の発信に関してもインターネット上では一個人で可能となったため、発信の手間もはぶける。後は、世の中がそのソフトウェア(映画監督的な撮影者)をどう評価するかだけである。
図 Blackmagic Pocket Cinema Camera1)
一方、映像の発信形態もYoutubeだけでなく、動画配信サービスにより定額で手軽にスマホやタブレットで本格的な映画(映画館で上映される)やテレビドラマを見ることができる時代となった。映画館にわざわざ足を運ばなくてもよいのである。古くは映画が娯楽であり、田舎の町にも小さな映画館があったが、それがテレビの発達から、レンタルビデオの発達に従い、映画館も縮小した。さらに、レンタルビデオも、動画配信サービスが普及するにつれ、レンタルビデオ店が軒並み廃業した。今現在において動画配信サービスはhulu、U-NEXT、dTVだけでなく、この9月からNetflix、AMAZONプライムビデオが加わり、増加の一途を辿っている。いずれは淘汰されることになろうが、そのキーポイントは、ある一定額に見合うだけのコンテンツの豊富さと、個人が希望とするコンテンツが如何にそのサービスに含まれているかの二点だけであろう。動画配信サービスが増えるのはうれしいが、利用者としてはどのサービスがよいのか悩ましいところではある。
まさに、手のひらにある映画監督と映画館とは、便利な世の中になった。
1) https://www.blackmagicdesign.com/jp/products/blackmagicpocketcinemacamera (閲覧2015.10.4)
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