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題名:垂壁のかなたで
報告者:ダレナン

 本報告書は、基本的にNo.1641の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 意識がもうろうとする中、頭の中でパトカーのサイレンの音が響いているかのようだった(No.1641)。やはりいくら慣れている大山とはいえ、こんな季節の、よりによって悪天候の時に、登るものではなかったかもしれない。それは、命が奪われる危険をはらんでいたことを意味する。愛の頂きを探す登攀とはいえ、反省していた。しかし、時すでに遅し。どんどんと体から体温が奪われているのを感じた。

(読者さま:あれっ、まったくストーリーにつながっていなかったのは(No.1641)、意識がもーろーとしていたからなのか…。もしかして、今、山に登ってビバークしてるのか、それって本当?)

 読者さまからも叱咤され、ちょっとは激励して”くらい”ほしいい気分になった。”くらい”ほしいい気分。”Dark”Starいい気分。たぶん、僕は、ここで野垂れじぬ。風もビュービュー吹いていた。Black DiamondなテントFirstlightの内で、幾分、身は守られているものの、この先も、読者さまからの酷評の風がやみそうになかった。やがて吹き飛ばされるかもしれない。

(読者さま:ひゅーひゅー、まっ、がんばりーな)

 その時、わずかばかりのその激励によって、恵みが天に通じたのであろうか、風がやみ、晴れ間が見えはじめた。ふと周りを見回すと、そこは、垂壁のかなたで、とんでもない所にビバークしているのが分かった(図)。

(読者さま:そんな、わきゃーないだろ。ここ、大山? 登攀? ちゃうやろ。しかも、カツオくんでもねーやろが。これ、これは、スティーブ・ハウスくん(*)やないかい。アドレス1)で、しっかりばれてしもーとるがな)

図 ビバーク中1)

*: 最小限の装備で登頂し、山に何も残置しない”アルパインスタイル”での登山を支持し、2005年8〜9月にパキスタン、ナンガ・パルバットのルパール壁を完登し、ピオレドール賞を受賞した2)。著書には「垂壁のかなたへ」3)がある。
1) https://japaneseclass.jp/trends/about/スティーブ・ハウス (閲覧2020.2.24)
2) https://ja.wikipedia.org/wiki/スティーブ・ハウス(閲覧2020.2.24)
3) https://www.amazon.co.jp/垂壁のかなたへ-スティーヴ-ハウス/dp/4560082057 (閲覧2020.2.24)



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