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題名:香ながら映画館
報告者:ログ

 本報告書は、基本的にNo.702の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 先の報告書で映画史を概観するとともに、豪華な寝台のあるプラネタリウム式の「寝ながら映画館」について提案し、そのキーワードとしてエンタメ・リラックスを提唱した。ここでは、さらに別視点で持って「香ながら映画館」を提案したい。
 人はよい香りをかぐとリラックスしやすい。近年、よく見かけるアロマディフューザーなどは、その効果を期待したものであり、香りの種類を選別すれば、心と体に癒しを与える。
 その香りは脳の中に他の知覚よりも記憶として残りやすい。さらに、それによって、何かが蘇ることもある。フランスの小説家マルセル・プルーストは大著「失われた時を求めて」の第一偏にて、ひと切れのマドレーヌとひとさじの紅茶でもって、「自分の内部で異常なことが進行しつつあるのに気づいて、びくっとした。素晴らしい快感、孤立した、原因不明の快感が、私のうちにはいりこんでいたのだ。」1)と記述し、香りが記憶に及ぼす効果を文豪的に示した。これが、香りに関する有名な「プルースト効果」であり、この効果で持って、香りが、失われた記憶を呼び覚ます。このような呼び覚まされ方は、感覚の中でも嗅覚が最も敏感とされている。その理由は、嗅覚と脳の中との関連にある。それを見ると、図のように香りの情報は、嗅神経と直結する大脳辺縁系を介して直接的に伝達される。その大脳辺縁系の領域には、記憶を司る海馬があるため、これによって香りによって記憶が呼び覚まされやすいのである。そのため、近年ではアルツハイマー型認知症の患者に対

図 嗅覚と脳の中との関連2)

して、嗅覚を刺激することによって脳を刺激し、認知機能を改善するような研究もなされている2)。
 一方、現在の映画館は、映像が優れ、音響も優れ、それによって視覚と聴覚が刺激され、時には「MX4D」のように体全体に刺激を与え、体の振動感覚などにも訴えるようになった。さらに3Dの台頭によって、より視覚に訴える映像も増え、先の報告書で示したように、映画「アバター」を筆頭に非常に増えてきた。しかしながら、3Dは視覚に大きく依存する。そのため、疲労感も多く、少なくともTVの3Dは、以前よりメーカーの開発は下火を見せ始めている。そこで提案したいのが、記憶とも結びつきやすい嗅覚への刺激である。映画館では、例えば、ポップコーンや、コーラなどの香りはするも、映画そのものからの香りは、今もってシステム的に皆無である。先に示したアロマディフューザーなどの機器の広まりを鑑みると、映画の映像の背景に合わせた形でデータ化された香り情報が、映画ともに映画館に香るような調香システムが今後開発されれば、その映画は非常に記憶に残りやすいものになるであろう。さらに、それと合わせて先の報告書で提案した「寝ながら映画館」を組み合わせれば、「寝ながら+香ながらの映画館」が誕生し、これぞ、まさに、エンタメ・リラックス・シアターの誕生となるに違いない。

1) http://www.campus.ouj.ac.jp/~gaikokugo/meisaku07/eBook/proust_08h.pdf (閲覧2018.1.10)
2) https://info.ninchisho.net/archives/9404 (閲覧2018.1.10)



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