題名:唯川恵さんの言葉を借りて
報告者:ダレナン
本報告書は、基本的にNo.1610の続きであることを、ここで前もってことわりたい。
琉花のアパートの中は、すっきりとしていた。余分な装飾されたものは何一つなく、かといって、必要最低限のものはちゃんと備わっていた。それはまるで、琉花自身の性格を表しているかのようだった。だから、それと同じく、琉花は僕を必要とし、僕も琉花を必要としている。たぶん、部屋の調度品に見合うように、僕らはお互いに調和していた。何の違和感もない。二人は、まさしく、その中に溶け込んでいた。
「いま、コーヒー淹れるねって、さっき飲んだっけ。何か食べる、カツオくん」
「うん」
「はずかしいけど、カップラーメンでもいいかな?」
「もちろん」
そうして、琉花は3分後に2人分の日清 カップヌードルをもってきた。「ごめん、これしかなくて、てへっ。いっしょに食べよ」。照れながら二人でカップラーメンを食べた。それでも、僕にとっては、この上ないごちそうだった。
「カツオくん…。今日…、泊まってく?」
「えっ、いいの」
「うん、カツオくんといっしょに居たいんだ。今日は…、どうしても…」
「なんで?」
「別に…。いっしょに居たいから…」
その日の午後は、二人は映画「トワイライト」を見て、のんびりと過ごした。そして、その後もお互いにいろいろなことをしゃべった。この上ない幸せなひと時だった。
夜は、夜で、二人は片時も離れることなく、一緒に過ごした(図)。この気持ちを唯川恵さんの言葉を借りるならば、
「愛しさに容量はない。心の中がいっぱいになり、これ以上は無理と思っても、とめどなく溢れて来る。止めるすべさえわからずに…、」2)
であった。
図 一緒に過ごす1)
1) https://www.pinterest.jp/pin/737745982695105478/ (閲覧2020.2.5)
2) 唯川恵: あなたへの日々. 集英社. 2010.