題名:受胎告知
報告者:ダレナン
本報告書は、基本的にNo.1829の続きであることを、ここで前もってことわりたい。
この世の中に、時代を一変するようなクレバーな人物がいるとすれば、Moon Town宇宙科学研究所の所長、ジムズ・キャロメン博士はその一人であったといえよう。
彼は、Moon Town宇宙科学研究所の初代の就任時から、フランコ・ハバド氏の寵愛を受けるだけでなく、デューン計画には具体的に参賀していなくとも、3Dホログラフィを推進し、アバターという概念でもって夢と現実の境を完全に無くした。そのことが、結果的にリアルな3Dホログラフィの世界を躍進させた。月の世界でのニューAIに基づいたリアル3Dホログラフィの実現を可能にしたのも、翌々の、完成したキーコの姿も、彼の偉大な功績による。そう、彼は、科学的な技術だけでなく、美術的なセンスにもあふれ、3Dの世界におけるその感性には、完成された感性があった。彼のその感性をねたむ人(ネ・ターミネータ)も多くいたが、そのたびに、彼はI’ll be backしたのだった。
その彼が、今まさにMoon Town宇宙空港からのロケットの積み荷を点検していた。第二弾の積み荷に対しては、その積み荷ボックス内に居るどの生命体も、完全無欠な有機体であることが確認できた。それは、ここの月の世界ではスーパーGのエイリアンズであり、所謂スーパーG改ズであるが、キャロメン博士の本音では、Moon Townの食糧難に対して新たな旋風を巻き起こすことが必須な有機生命体であった。サンプルを検査しても、放射線の問題は皆無に等しかった。後はどのようにこれを利用するか。特にスーパーGが、改となった理由書を読むと、この改は“あらゆる食料へ改できる”と書かれてあった。すなわち、書こう次第で、加工できる。例えば、スーパーG改→とんかつと書けば、とんかつへと加工できる。
ただし、第一弾ロケットの積み荷に関しては、そのボックスを検査すると、検体②のみしか、利用価値がなくなったことが明らかになった。ハバド氏の意志に従えば、壮大な計画のもと、検体①にもやや期待はあった。新たな血を流入させる、という目論見だ。しかし、ふたを開けると、検体①は、輸送の段階で遺伝的な情報が破壊されていた。したがって、検体②のみのわずかな新たな血となりそうであった。
キャロメン博士:「ふむ、検体①は使い物にならねーな。それは残念…だが…」
でも、検体②には放射線に対する頑強さだけでなく、Moon Townの新らたな変革を起こす子種であることも確信できた。その確信が、革新で、核心であり、キャロメン博士の直感でもあった。
これを次世代へと賭けるべく、キャロメン博士は奔走した。Moon Townの全住民のデータをかき集め、その中の2個体が次世代を受け継ぐべく優越な個体であることを突き止めた。そこで、これらの個体に対して検査という名目で、今回の実験がばれないよう、ダミーの父を与えつつ、受胎させた。受胎告知したのだ。
キャロメン博士:「うまくいったぜ…」
ここで言うまでもない。
むろん、その1個体が、ツキオの母であった。