題名:権力の構図 -権威がやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!-
報告者:エゲンスキー
権威と権力に違いについては、文献1)にあるように、権威:信頼があり、心理的に周りの人を服従させることができる、権力:他人を強制的に何かさせることができ、物理的に動かせることができる、となる。そのため、「権威」は人を服従させるという意味では「権力」と同じだが、信頼関係が成り立っているからこそ可能な服従のため、強制ではないことが大きな違いである1)。
その権威の象徴として、古くは、王冠などがあり、現在の日常的な例では、弁護士のバッジや医者の白衣が権威を象徴する道具となる2)。そのため、王冠や特別なバッジ、白衣などを見につけている人を見ると、脅威に感じ、盲心的に服従してしまうことがある。権威に対する盲心的な服従として有名な実験に、アイヒマン実験(または、ミルグラム実験)なるものがあり、アメリカのイェール大学の心理学者であったStanley Milgram博士による1963年の実験である。その内容は、教師役と生徒役に分かれ、教師役が単語リストを読み、生徒役が間違えると、教師役は生徒役に電気ショックを流すというものである。さらに、この教師役に対して白衣を着た権威者役が、いかなる状況になろうとも「続行する」ことを指示する。その結果、その権威者役の強い進言によって、教師役は一切責任を負わないということを確認した上で、実験を継続し、結果的に最大ボルトの前に実験を中止した教師役の者は一人もいなかった3), 4)。時には、教師役の者の神経性の笑い(nervous laughter)さえ見られた3)。これは、白衣という道具を着た権威者による教師役に与えた服従であるが、教師役は一切責任を負わないことで、その権威者役に対して盲心的に服従していることになる。その心理としては、「この人(権威者)が「続行しろ」ということは、自分は正しいことを行っているに違いない」という背景がある。すなわち、裏を返すと、権威者を信頼していることで、必然的にボルト数をあげ、生徒役の過ちを自分(教師役)が正している、と信じていることに他ならない。それは、権威から権力への移行をも示している。
一方、The Beatlesの全盛時代である1964年に「A Hard Day’s Night」というアルバムを発売した。その邦題は、「ビートルズがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!」であり、この邦題をつけたのは映画評論家になった水野晴郎氏で、同映画から来る5)。その邦題に関して、現在では「ア・ハード・デイズ・ナイト」とされるも、その当時の世相から、「ビートルズがやって来る」のは、まさに、「ヤァ!ヤァ!ヤァ!」な状態でもあり、1966年の初来日時の様子は、ある年代の人にとっては懐かしいかもしれない。しかしながら、その様子はこれもロックスターという権威を纏った(纏わされた)The Beatlesに、知らず知ら
図 The Beatlesの初来日6)
ずに洗脳され、服従しているという構図とも見てとれる。これを権力の構図として捉え直すと、与えられた側の盲心的な権威は、与える側の権力を行使したいがための、洗脳的な心理移行作戦ともいえるのかもしれない。
1) http://bi.heapsmag.com/authority-and-power/ (閲覧2018.11.1)
2) https://ja.wikipedia.org/wiki/権威 (閲覧2018.11.1)
3) Milgram, S.: Behavioral Study of Obedience. Journal of Abnormal and Social Psychology 67: 371–378. 1963.
4) https://ja.wikipedia.org/wiki/ミルグラム実験 (閲覧2018.11.1)
5) https://ja.wikipedia.org/wiki/ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!_(曲) (閲覧2018.11.1)
6) http://tsugu.cside.com/b-ken/history2/1966a.html (閲覧2018.11.1)