題名:昆虫とヒトにおける”ときめきの果実”の比較
報告者:ダレナン
本報告書は、基本的にNo.971の続きであることを、ここで前もってことわりたい。
ヒトは普段の行動もその多くは本能に根差し、食欲や性欲はむろんのこと、突発的な行動にはヒトの生物としての営みを垣間見れる1)。そのため、昆虫のような一見「下等」な生物にもヒトと共通する部分も非常に多い1)。ゆえに、昆虫自体に恋という概念があるか、ないかは別として、種として性的二形であることは、昆虫もオスとメスとしての関わりは、種の保存にとって通常の営みとなる。
ヒトの種の保存に関しては、もはや文化的な観点から、性的二形という生物としての規制の枠を外れ、様々な恋の形もある。ただし、いずれの場合でも、恋のベースにあるときめきという概念は、性如何に関わらず変わることのない普遍的な要素でもある。アダムとイヴがエデンの園にある果樹のうち、この樹の実だけは食べることを禁じられた果実とは、リンゴ、イチジク、ブドウ、コムギと所説あるも2)、禁断の果実(Forbidden fruit)そのものは、「それを手にすることができないこと、手にすべきではないこと、あるいは欲しいと思っても手にすることは禁じられていることを知ることにより、かえって魅力が増し、欲望の対象となるもの」を指す。かじって魅力を増し、場合によっては欲望の対象となるものとは、もしかすると、まさしく”ときめきの果実”(図)、だったのかもしれない。”ときめきの果実”を食べると、どうしようもなく(禁じられていても)、”ときめきの果実”を与えてくれた対象が気になってくる。イヴがヘビにそそのかされて、アダムにも禁断の果実を分け与えたが2)、その後のアダムの気持ちと、その気はリンクするのかもしれない。木(気)はやがて熟し、”ときめきの果実”もふんだんに実る。
図 ”ときめきの果実”3)
先の報告書では、昆虫の恋のときめきに関して触れたが、ヒトと対比して、昆虫の何が違うのかを知ることは、生物としての昆虫とヒトとの共通する部分を考える上で重要となるであろう。はたして、この”ときめきの果実”は、昆虫にもそのようなものが備わっているのであろうか。本報告書は、文献1)をもとにこれを探るものである。
昆虫においてオスとメスとの判別において重要となるのは、見た目もあるが、見た目で判別できない場合も多い。そこで、フェロモンが活躍する。オスはメスの体から出るフェロモンによって交尾行動に至る1)。昆虫の場合は、このフェロモンを感知する能力が高い。一方、ヒトはこれが未だに確証されていないために(報告書のNo.397も参照)、フェロモン的な”ときめきの果実”の所在は定かではないが、フェロモンに相当する「匂い」が様々な場面で恋愛に関係し、その後の行動に関与していることも示唆されている1)。その他、五感に関しては昆虫とヒトとではかなり異なり、これは”ときめきの果実”を与える要素とはならないようである。行動的にみると、ヒトの恋愛における贈り物作戦は、昆虫にも認められている。オドリバエというハエのなかまに婚姻贈呈なる現象があり、踊るように群飛するハエで、オスは獲物の昆虫をメスに見せて、メスがそれ目当てに飛びかかり交尾行動を行う1)。さらに、高価な贈り物に対する「甲斐性」の査定は1)、昆虫でもあるらしい。
1) 丸山宗利: 昆虫はすごい. 光文社. 2014.
2) https://ja.wikipedia.org/wiki/禁断の果実 (閲覧2018.11.16)
3) http://www.artbank.co.jp/stockillust/image_html/yamaokatoshikazu/1-S-TOY762.html (閲覧2018.11.16)