題名:夢世界における脳内の夢先案内人の方略
報告者:ダレナン
本報告書は、基本的にNo.960の続きであることを、ここで前もってことわりたい。
先の報告書では、夢世界は脳のアバターという可能性を、フィンランドの心理学者であるAntti Revonsuo博士らの報告によって説明した。そして、そのアバターによって、社会シミュレーションに住んでいる神秘的な現象を体験できるとともに、それは現実世界を案内する存在でもあることも仄めかした。ここでは、夢世界のアバターを特定すべく、脳内の夢先案内人の方略について調べたい。
ある年齢以上の方ならよく知っているであろう夢先案内人であるが、1977年4月にリリースされ、山口百恵さんの17枚目のシングルでオリコン1位を獲得した曲である1)。そして、作詞が阿木燿子さん、作曲が宇崎竜童氏とシンガーソングライターとしても著名な方であり、今もって人気も高い曲の一つでもあろうか2)。「月夜の海に 二人の乗ったゴンドラが…」で始まり、「ちょっぴり眠い 夜明け前です…」「そんな夢を見ました…」となる2)。この記述から、うとうとした状態であることが推測される。
睡眠について、睡眠が深くなり脳波がゆっくりとした波(徐波)となると、ノンレム睡眠といわれる状態になる3)。一方、振幅の小さな活発な脳波パターンをもち、急速な眼球運動が見られ、呼吸や脈拍の乱れも生じ、脳が覚醒しているのに、体の筋肉の緊張状態が低下している時は、レム睡眠といわれる状態にある3)。このレム睡眠が、うとうとした状態であり、一般的にこの時に夢を多く見る。しかしながら、近年ではノンレム睡眠中でも脳の後部皮質領域が活動し、それが意識的経験と関連する部位の中核であることから、それでもって夢の体験を現実のように感じているとの知見もある4)。ただし、ノンレム睡眠、レム睡眠のいずれの場合でも、夢が発現する案内人は、脳幹の神経節にいて5)、これが「あなたはときどき振り向き Wink and Kiss…」2)する。そして、Wink(睡眠)とKiss(夢)でもって、記憶を統合し、記憶の形成に重要な役割を果たす6)。
文献5)によると、夢を見る時、脳幹内の神経節にあるコリン作動性ニューロンが活性化し、PGO(脳橋-外側膝状体-後頭皮質)波という電気エネルギーの不規則なパルスを誘発する。このPGO波が脳幹をのぼって視覚皮質に入り、そこを刺激して夢を生み出す。そして、ノンレム睡眠、レム睡眠に関しては、前者は有用なカテゴリーに情報を編集するのに役立っており、後者はそれらのカテゴリーを超えて予期せぬ接続を発見するのに役立っていることが示唆されている6)。そして、海馬によって捕捉された記憶は、ノンレム睡眠中に再生され、それらの間の類似性を検出して、その情報を皮質に保存する6)。一方のレム睡眠中では、海馬と皮質はほぼ同調せず、記憶された記憶を任意の組み合わせで自由に再生することができ、PGO波によって皮質の領域をランダムに活性化させ、異なるスキーマからの記憶の再生を引き起こしている6)。「生きてることの喜びに 言葉をなくす…」2)は、場合によってはレム睡眠の自由さを示しているのかもしれない。
1) https://ja.wikipedia.org/wiki/夢先案内人(閲覧2018.11.9)
2) https://ameblo.jp/miyazakinow/entry-11159468972.html (閲覧2018.11.9)
3) https://web2.chubu-gu.ac.jp/web_labo/mikami/brain/102/discus_6.html (閲覧2018.11.9)
4) Siclari, F., et al.: The neural correlates of dreaming. Nat Neurosci 20: 872-878, 2017.
5) ミチオ・カク: フューチャー・オブ・マインド. NHK出版. 2015.
6) http://www.trans4mationaltherapy.com/~transgm3/blog/350-how-rem-and-non-rem-sleep-may-work-together-to-help-us-solve-problems (閲覧2018.11.9)