題名:美神アフロディーテの魔法の帯を求めて
報告者:アダム&ナッシュ
本報告書は、基本的にNo.686の続きであることを、ここで前もってことわりたい。
先の報告書にて、ヒトの裸における芸術とエロスについて思索するともに、ギリシア神話のエロースと、その母でもある美の女神アフロディーテの神話からも絡めて考察し、さらに、現代の美しいモデルさんの一人であるAnna Ioannovaさんの画像によって、その思索を例示した。ここでは、そのアフロディーテが身に着けていたとされる魔法の帯と呼ばれる神話をもとに、現代的アフロディーテについて検討したい。
アフロディーテは、その誕生から特筆すべき逸話が残されている。アフロディーテの父である、全宇宙を最初に統べた原初の神々の王とされるウラノスが1)、その妻であるガイアの子らが幽閉される非道さに、ガイアは憤りを覚え、子の中のクロノスが母の命令によって鋭い歯のついた大きな長い鎌でもって、父クロノスに歯向かうこととなる2)。それによって、クロノスの生殖器が切り取られ、海に放り投げられた。その時の血が海に流れ出し、その泡が美の女神アフロディーテを生み出したとされる2)。その詳細は文献2)で確認していただければ幸いであるが、神話であることから、現実では考えられない出来事ではある。しかしながら、現在でも、強大な権力を有する男性が、とてつもない絶世の美人の女性(愛人)に対して、法令上の妻ではないものの、密かに子を設けることもしばしばありうる。そこに争いが生まれるが、その女性は、法律上では未婚の母となる。しかしながら、生まれる子は、父の権力者のオーラを兼ね備え、母の絶世の美貌を兼ね備えている。そのような子であれば、その行く末は明らかである。すべての男性が一目を置く女性に成長する。たぶんに、美神アフロディーテは、かつての古代ギリシアにおけるそのような人物だったに違いない。ただし、ギリシア神話の続きでは、美神アフロディーテといえども、さえない伴侶に対して愛欲を抑えきれず、数々の英雄との浮名を流すこととなる。それができたのは、アフロディーテが魔法の帯を持っていたからとされている。その魔法の帯とは、「愛」と「憧れ」と「欲望」が秘められ、身に着けるのが神であろうとも、人間であろうともその魅力が高まり、その者の虜になってしまう帯である2)。虜の意味で問えば、先の報告書のAnna Ioannovaさんも、その魔法の帯を持っている人の一人かもしれない。ちなみに、アフロディーテは、英語圏ではヴィ―ナスのことを指す。報告書のNo.184でも示されているイタリアの画家サンドロ・ボッティチェッリの有名な絵「ヴィーナスの誕生」は、アフロディーテの誕生に他ならない。
現代はデジタルによるアートも発展し、サンドロ・ボッティチェッリの時代とは違うアプローチでもってアフロディーテも誕生している。ギリシアのアーチストであるAlexander Scaramanga氏も、デジタル技術でもって現代版アフロディーテを創造した。図にそれを示す。これがとても素晴らしい。まさに、現代的アフロディーテの誕生である。
図 Alexander Scaramanga氏のアフロディーテ3)
1) https://ja.wikipedia.org/wiki/ウーラノス (閲覧2017.12.22)
2) 松尾一男(監修): 図解 ギリシア神話. 西東社. 2007.
3) https://askar.deviantart.com/art/Aphrodite-010-30743352 (閲覧2017.12.22)