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題名:芸術家Peter Callesen氏による「瀕死の白鳥(The Dying Swan)」への解釈
報告者:ナンカイン

 「瀕死の白鳥(The Dying Swan)」はロシア出身のバレエダンサーで振付師、かつ、バレエ教師であったMikhail Mikhailovich Fokin氏が、1907年に当時、世界一のバレエダンサーでもあったAnna Pavlovna Pavlova氏のために振り付けた作品である1)。しかしながら、「瀕死の白鳥」は、Pavlova氏そのものでもあり、「瀕死の白鳥(The Dying Swan)」といえば、Anna Pavlovna Pavlovaと言われるぐらいに代名詞でもある。そのため、Pavlova氏を超える「瀕死の白鳥」を踊るには並大抵の苦労ではない。その後、20年後にして、同じくロシアのMaya Mikhailovna Plisetskaya氏が違う振り付けで踊るまで、誰も踊ることができなかった2)。
 「瀕死の白鳥」の世界は、死に瀕した白鳥が生に向かって必死に羽ばたきながらも、ついには力尽きて死んで行く様を描いている3)。そのため、生と死のドラマが舞台で凝縮され、生への希求と敬虔さ、死に瀕した悲しみ、決して絶望ではない「死」の訪れ、こうした内面世界がバレエによって表現されなければならない3)。ゆえに、バレエダンサーのあらゆる内面もそこに映しだされるとともに、その舞台でダンサーとしてのすべてを出し切らなければならない。真に、芸術でもって、身も心も削るとは、このような表現の果てにある崇高な世界にあろう。ただし、身も心も削ることから、そこに闇も潜んでいる。場合によっては、芸術によって精神が破壊される。この辺の様子は、ダーレン・アロノフスキー監督、ナタリー・ポートマン主演による映画「ブラック・スワン」に克明に描かれている。
 Maya Mikhailovna Plisetskaya氏による「瀕死の白鳥」がYoutube4)にあるので、バレエによる「瀕死の白鳥」に興味のある方はそちらを参照していただきたい。もがく下半身と、優美な上半身の対比が見事であり、バレエによる身体表現の最高峰でもあるとともに、人が身体を用いて表現しうる芸術の最たるものであるに違いない。Plisetskaya氏は2015年に惜しくも他界したが、ここに、氏の表現に感謝したい。
 一方、人の所業は悲劇だけでは終わらない。時には当事者にとって悲劇であっても、他者からは喜劇にも見えることもある。そこに「白鳥の瀕死」への新たな解釈が生まれる。それを表現したのがデンマークの芸術家Peter Callesen氏である。氏は「瀕死の白鳥(The Dying Swan)」への解釈として、死、再生、自己創造、自己破壊でもって、自分の宇宙を創造し5)、そこに悲劇と喜劇の、人の所業の、見事な織り成しをパフォーマンスする。その動画は氏のHP5)を見ていただければ幸いであるが、ここでは図で示す。この解釈が実に素晴らしい。

図 Peter Callesen氏による「瀕死の白鳥」5)

1) https://ja.wikipedia.org/wiki/ミハイル・フォーキン (閲覧2017.12.2)
2) https://ja.wikipedia.org/wiki/瀕死の白鳥 (閲覧2017.12.2)
3) https://novel.onl/dying-swan/ (閲覧2017.12.2)
4) https://www.youtube.com/watch?v=Krj-QsQvYSc (閲覧2017.12.2)
5) http://www.petercallesen.com/performances/the-dying-swan/ (閲覧2017.12.2)



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