題名:愛から情への移り変わりは波の如く
報告者:ゴンベ
人の精神のはかなく、それでいて、移ろいやすい。それだけ、人の精神の脆弱性を示しているとともに、どのような人であれ、人という存在は完全なる存在ではないことをも示唆しているのかもしれない。人はエイリアンのように完全なる有機体ではないのである。
人の精神の移ろいやすさは、よく捉えると、昨日の自分は今日の自分ではなく、常に人は進歩しているともいえる。わるく捉えると、昨日の自分は今日の自分とは微妙に異なるともいえ、そこに進歩的な要素があればまだしも、他人から見れば退化していることに本人が気づいていない、こともありうる。所謂ジェネレーションギャップはその時に深まることもしばしばある。進歩や退化という表現はいささか行き過ぎかもしれない。しかしながら、感情の起伏の変化は、とみに恋愛における感情において多いことが類推される。場合によっては恋愛によって時空が歪み、そこにブラックホール的な現象も垣間見られる(報告書のNo.216も参照)。その恋愛の特異な感情は、互いにおいて受ける影響が社会的な状況を超え、ともすれば社会的には容認されない状況であっても、互いには容認せざるを得ない状況をも生み出すことがありうる。
これが、2人の世界となる。
一方、恋愛において互いを知り、ますます互いを知り得たいという感情の欲求がピークに達した時に、互いの愛もピークへと達しやすい。その時は、そのピークはいつまでも続くかのような錯覚ももたらされる。しかしながら、恋愛における感情の欲求は、海の波のように押して引き、押して引き、ある波において最ピークに達してしまったが最後、その大きな波の振幅は、いつしか冷静な状況へと至る。残るのは、静かな海への眺望だけである。そこから、愛は、いつしか情へと、変化する。愛から情への位相の転換である。波の振幅だけではなく、波の周波数も変調し、もはや元の世界には戻れない。
大きな波は、そう何度も得られるものではない。それが愛の本質でもあり、人の感情の、やがて来る安定化への布石でもある。ただし、大きな波を一度でも経ると、何度でもその波が起こるような錯覚は、互いを傷つける。そして、振幅だけではなく、周波数も変調した波は、互いの何かを運び去る。そのような恋愛における感情の波をうまく歌に乗せることができれば、そこに名曲が生まれる。熱愛の曲よりも、失恋の曲が心に残るのは、人のサガかもしれない。ここで、オーストラリア出身のシンガーソングライターであるDean Lewisによるその名も「Waves」という曲でそれを観てみたい。「Waves」は、恋愛における感情の起伏をうまく「波s」で表現し、曲も歌詞1)もMV2)も非常に素晴らしい。
And I’m trying hard to let go
But it comes and goes in waves
‘Cause it comes and goes in waves
And carries us away
人の感情の波は、いつも何かを運び去る。それは2人の世界も、互いの愛すらも、である。
1) https://genius.com/Dean-lewis-waves-lyrics (閲覧2017.7.16)
2) https://www.youtube.com/watch?v=dKlgCk3IGBg (閲覧2017.7.16)