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題名:絵画におけるリアリズムを思索する
報告者:アダム&ナッシュ

 本報告書は、基本的にNo.312の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 本報告書は先に筆者らの個人的な好みが色濃く反映されているかもしれないことを前もって伝えたい。それは、絵画の鑑賞においてどうしても各個人ゝの絵画への見方や解釈が異なるからでもある。
 先のNo.312にて、写真が発達した時代における絵画の技法の流れについて述べた。さらに、その時代背景から、絵画は大きく印象派などの精密さを追い求めるよりも、より絵画らしい主題の細部ではなく本質を素早く捉える1)技法と、新古典派のように絵画の古典を認めつつ、より精密に、写真以上の実在的な内容を求める技法とに分かれたことを示した。その観点で言えば、No.312で示したブグロー(William Bouguereau)は、まさに写真以上の本質を絵画の中に求めんとして、追力した画家のひとりであるかもしれない。
 いずれの派にせよ、写真が発展した、この時代から以降は、絵画と写真との関係は切っても切り離せない関係となった。その流れで問えば、現在の写実主義に基づく絵画2)は、まさしくブグローが求めた古典的な考えを、現在的な解釈(写真の様相も含め)として発展させた様相であることは間違いない。
 文献2)によれば、現在の中でも最も筆者が好ましいと感じる現代的な写実主義の実践者は、原崇浩氏と、塩谷亮氏の二名と考えている。むろん、人によっては、その意見は異なるであろう。その他の作者も間違いなく非常に素晴らしい。しかしながら、ことリアリズムというテーマを掲げて、その系譜を追うと、スペインのリアリズムの雄である、アントニオ・ロペス氏は外すことができず、中でも特に、原崇浩氏はアントニオ・ロペス氏から直接学んだ経緯もあり、画風がよく似ていることから、筆者にとって好ましく感じることは当たり前でもある。たぶん、アントニオ・ロペス氏の好ましさを理解している方であれば、原崇浩氏の作風は納得がいくはずである。原崇浩氏の作品例を図に示す。とても素晴らしい絵である(裏を返せば、絵の稚拙な筆者としては、単純にこれだけの画力があることは、うらやましい限りでもある)。
 アントニオ・ロペス氏曰く「巧みな技術で、目の前にある

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図 原崇浩氏の作品例3)

ものが何なのかを深く考えずに、できるだけ忠実に写すということと、あれがいったいなんなのかを理解することとの間には、大きな隔たりが存在する」4)とのことが記述されているように、物事の本質を見抜き、それを表現することは如何に難しいことかがよく分かる。逆に言えば、これが出来ることが、真のリアリズムの近道になるのであろう。この辺の思想を探ると、写真も絵画も最終的にはそれほど違いがないはずである。

1) https://ja.wikipedia.org/wiki/印象派 (閲覧2016.9.21)
2) 月刊美術(編): 写実画のすごい世界. 実業之日本社. 2013.
3) http://nosvis.com/article/zokyudo-gallery-kyoto/3/ (閲覧2016.9.21)
4) ロペス, A 木下亮(訳): アントニオ・ロペス 創造の軌跡. 中央公論新社. 2013.



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