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題名:お笑いの質をヒトの進化から問い直す
報告者:ナンカイン

 本報告書は、基本的にNo.282の続きであることを、ここで前もってことわりたい。

 先の報告書のNo.282にて、お笑いがヒトの心の進化で重要であったことが推測された。ここでは、その進化をもたらしたであろうお笑いの質を、ヒトの進化から問い直してみたい。
 一般的に、英語では笑いは二種類あり、LaughとSmileである。No.282の図では、これに加えて、Laughterもある。LaughとSmileの違いは何となくわかり、前者は笑い、後者は微笑である。しかしながら、+erのLaughterの意味は何かと問えば、Play+er = Playerと同じく、笑う人というニュアンスが含まれ、そこに他者からの視点も含まれてくる。Laughter is the best medicine(笑いは最良の薬)とのことわざがあるが1)、ここでもLaughではなく、Laughterとされる。すなわち、ただの笑いが、お笑いとなる訳である。あるいは、乙(おっ)笑いでもよいかもしれない。ただの笑いに他者の視点が内包されている絶妙な笑い(笑いの壺)こそが、質的な意味合いとして、ヒトの心の進化上では重要になる。
 実は、ヒト以外の動物でも笑いがある。例えば、ヒトに最も近縁であるチンパンジーにも笑いがあるとされていることが明らかである2), 3)。そのため、単純な笑いではヒトの心の進化は問うことができないであろう。それでは、他者の視点が内包されている絶妙な笑い(笑いの壺)は、一体何であろうか。
 ここで視点を変え、チンパンジーとヒトの表情筋について調べてみると、それが図になる。これを見ると明らかだが、Zygomatic Major(大頬骨筋)が大きく異なることが分かる。大頬骨筋は、口唇周囲にかけての口筋の中で口角を上外側に引き上げる働きをする筋肉であるが5)、この筋肉に笑いの壺を誘発させるヒントがあるようである。この大頬骨筋は、笑顔の黄金比率のつくり方や美人の必須条件で大事な筋肉
でもあり6)、笑いの壺に嵌まるよう、他者

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図 チンパンジーとヒトの表情筋の比較4)

の大頬骨筋を動かすことができる芸人さんは、他者の人間性も高めることができることをも示唆している。

1) http://ejje.weblio.jp/content/laughter+is+the+best+medicine (閲覧2016.7.6)
2) 杉山幸丸(編): 人とサルの違いがわかる本. オーム社. 2010.
3) Davila Ross M, Owren MJ, Zimmermann E: Reconstructing the evolution of laughter in great apes and humans. Curr Biol 19: 1106–1111. 2009.
4) http://blogs.discovermagazine.com/loom/2008/12/15/the-evolution-of-the-face-a-letter-to-some-readers-in-tennessee/ (閲覧2016.7.6)
5) https://ja.wikipedia.org/wiki/大頬骨筋 (閲覧2016.7.6)
6) http://www.skincare-univ.com/article/008687/ (閲覧2016.7.6)



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