題名:龍角散の歴史と成分
報告者:ナンカイン
龍角散の名前を知らない人はいないであろう。さらに、名前だけではなく、どのような薬かもほとんどの人は知っていることと思われる。「ゴホンといえば、龍角散」とあるように、ゴホンに対して効用がある。すなわち、咳である。
その龍角散の歴史はとても古く、御社のHP1)によれば、江戸時代まで遡ることができる。江戸時代の中期に秋田藩(藩主佐竹侯)の家伝薬として御典医である藤井玄淵氏によって伝えられてきたものが元であり、江戸時代の末期に藤井正亭治士が改良を加え、龍角散の名前を持った1)。この後も何代にもわたって藤井家がこれを守り、現在の株式会社龍角散の代表取締役社長も、八代目の藤井隆太氏にあたる。
図に龍角散のパッケージを示す。パッケージに記載されているように、正確には鎮咳去痰剤である。医薬品の分類としては、第3類医薬品に相当する。第3類医薬品とは、副作用、相互作用などの項目で、第1類医薬品や第2類医薬品に相当するもの以外の一般用医薬品とされる2)。そこで、第1類医薬品や第2類医薬品は何かというと、第1類は、副作用、相互作用などの項目で安全性上、特に注意を要し、販売は薬剤師に限られ、書面による情報提供が義務付けられるとされる2)。第2類は副作用、相互作用などの項目で安全性上、注意を要し、主にはかぜ薬や解熱剤、鎮痛剤など日常生活で必要性の高い製品にあたる2)。そのことから、第3類は副作用、相互作用も少なく、販売もしやすい医薬品であることが分かる。
図 龍角散2)
龍角散はキキョウ・セネガ・キョウニン・カンゾウといった生薬(しょうやく)を主成分とした薬である3)。それが第3類医薬品に分類されている理由なのかもしれない。生薬については、天然に存在する薬効を持つ産物から、有効成分を精製することなく体質の改善を目的として用いる薬の総称とされ4)、所謂漢方に近い薬である。ただし、正確に漢方薬は、複数の生薬を漢方医学の理論に基づいて組み合わせた処方としての薬となるため、生薬そのものは漢方として位置づけていないようである4)。しかしながら、現在の化学薬品が登場する前は、薬のほとんどが生薬由来になるため、龍角散も江戸時代では第1類医薬品的な扱いであったであろうことは容易に推測できる。
このようにして考えると、龍角散が江戸時代からすでにあったことには驚くべきものがある。誰がキキョウの効果を発見したのかは不明ではあるが、少なくとも、筆者がゴホンの時は、または、就寝時のゴホンがひどい時は、まずは龍角散に頼る、頼りたい、頼れる、のである。江戸時代では、上流階級の人しか頼れなかった薬であったのかもしれないが、その当時からの好評さが、今の時代でも引き続いていることは間違いないであろう。自然から学びとる先人の知恵には頭が下がる思いである。
1) https://www.ryukakusan.co.jp/company#company_02 (閲覧2016.6.16)
2) https://www.ryukakusan.co.jp/productdetail/detail/1/3 (閲覧2016.6.16)
3) https://www.ryukakusan.co.jp/assets/itemsAssets/attach/ryukakusan_1.pdf (閲覧2016.6.16)
4) https://ja.wikipedia.org/wiki/生薬 (閲覧2016.6.17)