題名:ポートレイト写真における潜在的な無意識の意識を考える
報告者:アダム&ナッシュ
ポートレイト写真は、その人物なり、その人物の性格なりを映しだすことが重要である。そのため、如何に撮影者側と被写体側との間に心が通じ合っているかが、そのポートレイト写真の出来不出来を判断する材料ともなる。その心の通じ合いは、実際には目には見えない存在ではあるが、うまく撮影されたポートレイト写真には、「ドキッ」とさせられることもしばしばである。その瞬時の判断には、写し出された被写体側の人物を潜在的に読み解く無意識の意識が備わっているからであろうか。
このような人物への判断において、Manerら2)は、人は興味のある顔を見ると1秒以内に、その顔が仲間か、敵かを判断することを示した。さらに、魅力的な人物の場合は、規定の時間(1秒)よりも、100ミリ秒長く凝視することが明らになった。このことから、ポートレイト写真にある被写体の魅力さは1秒以内に決まり、魅力であれば、より見たいと願うことが示唆される。ここで、よく見るポートレイト写真として、雑誌を例に挙げてみよう。雑誌は月刊なり季刊なり、その販売の時期は様々であるが、専門的な内容の雑誌以外はその表紙にモデルさんを使ったものが多い。これには、人は人の顔に反応しやすいという性質もあるが(No.164)、雑誌などに掲載されているモデルさんの表情につられて、その雑誌をつい衝動買いすることも少なくはないであろう。そこには撮影者を介して、被写体側と購入者側との1秒以内の心の通じ合いを潜在的に期待している節もあり、よいポートレイト写真を使うと、雑誌の売り上げが伸びるのもこれで証明できる。
一方、デザインにおいて、人物の画像における顔の占める割合を「フェース率」と呼び、この率も人物の認識のされ方に影響を及ぼすことが知られている2)。画像の大部分で顔が占める「フェース率」が高い場合では、人物の知的・人格的属性に注目され、画像の大部分で体を占める「フェース率」が低い場合では、人物の肉体的・官能的属性に注目される。
図 Emily Ruddさんの写真3, 4)
ここで2つの写真を見比べてもらいたい。どちらもモデルのEmily Ruddさんの写真であるが、先の1秒の法則や、「フェース率」の法則に、両方とも見事にあてはまるポートレイト写真であることが納得できる。
1) Maner, JK, Gailliot, MT, Rouby, A, Miller, SL: Can’t take my eyes off you: Attentional adhesion to mates and rivals. J Perso Soc Psychol 93: 389-401, 2007.
2) Lidwell, W, Holden, K, Butler, J: Design rule indexデザイン 新・100の法則. ビー・エヌ・エヌ新社. 2004.
3) http://www.walloza.com/wallpaper/10283-emily-rudd-smile-photos-hd-wallpapers (閲覧2016.2.9)
4) https://wallpaperscraft.com/download/girl_brunette_look_87588/1920×1080 (閲覧2016.2.9)