題名:映画グランブルーに登場するパスタについて
報告者:トシ
映画グランブルーについては今更レビューする必要もないであろう。フランスの映画監督であるリック・ベッソン氏の出世作でもあり、この映画に出演しているジャン・レノ氏の出世作でもある。そのリック・ベッソン氏は、映画監督になる前にダイバーを生業としていた。しかしながら、ベッソン氏は潜水事故によってダイバーを断念し1)、その結果として映画監督の道に邁進することとなった。そのため、この映画にはベッソン氏の並々ならぬ情熱が感じられる。1988年に公開され、彼の映画監督としては3作目にあたるが、この時期は、映画監督として波に乗り始めた頃でもあり、かつ、その年代は30歳目前の節目でもある。そのため、氏はどうしても過去のダイバーとしての自分自身を重ねるような映画を撮影したかったに違いない。ある意味、この映画はベッソン氏の特別な映画でもあり、氏自身のメルクマークでもある。また、エンドクレジットでは、この映画を女優アンヌ・パリロー氏との実の娘であるジュリエッタさんに捧げていることも確認できる。
この映画の魅力は、単純な海洋の美しさだけでなく、ダイバーの友情や恋人とイルカへの愛情、ギリシアやレストランなどの風景、エリック・セラ氏の音楽など沢山挙げることができる。特に主役ダイバーのジャック・マイヨールは、寡黙でミステリアスな魅力に溢れ、これもこの映画のポイントでもある。そのジャック・マイヨールは実在の人物で、実在のマイヨール氏は兄のピエール氏による著書2)では、寡黙でミステリアスな人物ではなかったようであるが、2001年に自殺にて残念ながら亡くなった。マイヨール氏の生前の性格からすると、その死の真相は今でも謎である。しかしながら、現実とは異なる映画のマイヨールの人物として有名になることでそこには人知れず苦脳があったのであろう。ある時期を境に鬱的な状態であったようである2)。
この映画の最も印象的な場面は、むろん最後の「ゴーオンシーマイラブ」になるかもしれない。しかしながら、パスタ好きの人にとっては、もう一人の主役のジャン・レノ演じるエンゾのマンマの大盛りパスタの場面になるであろう。グランブルーで登場するパスタについては、諸家によりすでにどのような種類のパスタであるのかが判明している。その種類は、海の幸のスパゲッティ3, 5)、もしくはあさりとトマトのパスタ4)、そしてペペロンチーノ5)(図)である。エンゾのマンマが作ったのは、この中でペペロンチーノに相当する。イタリアンの料理人であるヴァッローネ氏6)によれば、このペペロンチーノは、イタリアンのレストランのメニューにはなく、日本のお茶漬けと同じような位置づけにある。そのため、エンゾのマンマがはりきって作ったのも、家庭ならではのパスタを食べさせたいというマンマの愛情の表れであったと推測できる。
図 ペペロンチーノの写真7)
1) https://ja.wikipedia.org/wiki/リュック・ベッソン (閲覧2016.1.4)
2) マイヨール, ピエール. ムートン, パトリック: ジャック・マイヨール、イルカと海へ還る. 講談社. 2003.
3) http://www.akikotomoda.com/lecture/?p=3286 (閲覧2016.1.4)
4) http://ameblo.jp/maron-magic/entry-10620306992.html (閲覧2016.1.4)
5) http://www.geocities.co.jp/Foodpia/1024/movie/movie_gb_photo.html (閲覧2016.1.4)
6) ヴァッローネ, アドリアーナ: 南イタリア スローフードな食卓より. 東京書籍. 2004.
7) http://plusalfa.exblog.jp/17909497/ (閲覧2016.1.4)