題名:インスタントカレーの華麗なる歴史
報告者:トシ
カレーはもはや日本の国民食であり、日本人で知らない人はいないであろう。そのカレーであるが、基本的な作り方は、まずは肉を炒め、次に人参やジャガイモや玉ねぎを炒め、そこに水を投入して、ぐつぐつ煮る。そして、各素材が柔らかくなった時点でカレールウを投入する。すると、カレーの匂いが部屋一面に充満し、夕食であれば今晩のおかずはカレーだぁー、となる。また、部屋から匂いが漏れ、室外でカレーの匂いがすると、このお宅の今晩の夕食はカレーっぽいなぁ、とすぐに分かる。これだけ匂いのある料理は他にはないであろう。その匂いの背景には、カレーには各種スパイスが含まれているからであり、そのスパイスの多さはカレーの大いなる歴史を感じざるを得ない。カレーの黄色の元となるターメリックをはじめとして、代表的なスパイスだけでも12種もある1)。
カレーが発明された正確な年代は不明である。しかしながら、カレーに使われているスパイスのうちインド原産のものは、紀元前2300年頃に存在したインダス文明時代から栽培されており、スパイスをたくさん使ったインド料理の原型、すなわち、現在のカレーの原点がそこで誕生していたと言われている2)。昔の人がどのようにして様々なスパイスを選別し、カレーとして利用できたのかは分からないが、ある意味これだけ多くのスパイスを利用したのは、カレーを一種の薬としてみなしていたのかもしれない。今ではカレーは料理の一つであるが、昔は本当の意味での薬膳料理だったのであろう。
その歴史あるカレーではあるが、現在のように簡単に作れるようになったのは、1945年まで待つ必要があった。紀元前2300年から、ざっと数えて4245年の歳月である。少なくとも1945年以前は、カレー粉を元に小麦粉と脂を炒め、肉や野菜のスープも投入してルウを作るところから始めなければならなかったため、家庭で簡単にはカレーを作ることができなかった3)。洋食屋でカレーが高級料理として扱われていたカレーの大衆化がなされる前の時代である。しかしながら、1945年に株式会社オリエンタルがインスタントカレーなるカレー粉を牛脂やバターで炒めた小麦粉などとまぜてかためた顆粒のルウを発売した3)。その株式会社オリエンタルの創業者である星野益一郎氏は傑出したアイデアマンであったようで3)、紀元前2300年からのカレー作りの歴史が、この星野氏によるアイデアによって1945年に華麗に飛躍したことになる。インスタントカレー元年ともいえる年である。図に株式会社オリエンタルのロゴマークを示す。このインド人のようなコックさんのイラストに郷愁を覚える人も少なくはないであろう。当方もその一人である。今でこそ各社から発売されるようになったカレールウではあるが、カレールウの元祖は株式会社オリエンタルにあった。
図 株式会社オリエンタルのロゴマーク4)
1) http://www.ezaki-glico.net/curry/spice.html (閲覧2015.12.3)
2) http://ww.zero-yen.com/history_01.html (閲覧2015.12.3)
3) https://www.nttcom.co.jp/comzine/no119/long_seller/index.html (閲覧2015.12.3)
4) http://www.oriental-curry.co.jp/index.html (閲覧2015.12.3)